保険システムよもやまばなし(第73回)
変革の波にひそむ脅威:リスク見直し対策を
「保険システムよもやまばなし」では、最先端のIT技術動向と保険業界に与え
る影響について取り上げています。最近の技術の進化、生成AIやDXなどの動向
は目覚ましいものがありますが、それと同時に、セキュリティに対する意識を
高める必要があります。特に、これらの技術革新がもたらす新たな脅威につい
ては、しっかりとした対策が求められます。
今回のテーマは、2024年7月30日に情報処理推進機構(IPA)から公開された
「情報セキュリティ白書2024」を中心に進めます。2008年から毎年発行されて
いるこの白書は、情報セキュリティに関する最新の政策、動向、そして具体的
な事例を取り上げ、対策や事例別の対処法について解説しています。
システムやセキュリティの管理者だけでなく、組織全体のリスク管理にとって、
非常に有益な資料と言えます。今年の副題「変革の波にひそむ脅威:リスク見
直し対策を」が示す通り、現在の情報セキュリティにおけるリスクを再確認し、
その対応策を見直すことが急務であることを訴えています。
■情報セキュリティ白書2024の概要
「情報セキュリティ白書2024」は、サイバー空間の現状を詳細に分析し、これ
に対する対策を解説する貴重な資料です。今年の白書では、デジタル化の急速
な進展と、それに伴う新たなリスクについて取り上げています。例えば、生成
AIの急速な発展により、サイバー攻撃の手口がさらに高度化・巧妙化しており、
これに対する予防策が不可欠です。また、ロシア・ウクライナ戦争などの国際
情勢がサイバー攻撃に与える影響についても言及されています。
特に注目すべきは、ランサムウェアの感染やクラウド設定ミスによる大規模な
情報漏えい、そして内部不正による情報持ち出しの増加です。これらのインシ
デントは、ネットワークの脆弱性を突いた攻撃が増加していることを示してお
り、今後はさらに強化されたセキュリティ対策が求められます。
また、特筆すべき事項として、「虚偽情報拡散の脅威と対策」、「AIのセキュ
リティ」についての事例や対策についての記載が挙げられます。
■主要な内容とトピック
本白書は、260ページ以上にわたって情報セキュリティに関する最新の動向を
解説しています。序章で2024年度の情報セキュリティの概況に触れ、その後大
きく次の4章に分けて解説がなされています。
第1章 情報セキュリティインシデント・脆弱性の現状と対策
ここでは、重要インフラを狙った攻撃や、ランサムウェアによる被害、ディー
プフェイクを用いた詐欺の事例などが取り上げられています。これらのインシ
デントは、サイバー攻撃がますます巧妙化していることを示しており、企業や
個人のセキュリティ対策の見直しが必要です。
第2章 情報セキュリティを支える基盤の動向
世界各国で進められている情報セキュリティ政策や国際標準化の動向、人材育
成の取り組みについて解説しています。これにより、国内外の情報セキュリ
ティ基盤の強化が進んでいることがわかります。
第3章 情報セキュリティ対策強化や取り組みの動向
企業内部の不正行為や、その防止策に焦点を当てています。特に、IoTやクラ
ウドサービスのセキュリティ対策についての議論が進んでおり、新しいセキュ
リティ基準の策定が急務とされています。
第4章 注目のトピック
2024年は、各国での国政選挙が相次ぐことから、ディープフェイクが選挙に与
える影響についても注目が集まっています。さらに、AIの進展に伴うセキュリ
ティリスクとその対策についても詳細に説明されています。
■リスク見直し対策の重要性
変革の波に乗りながらも、その裏に潜む脅威に対しては常に警戒を怠らないこ
とが必要です。特に、生成AIやDXの進展に伴い、情報セキュリティのリスクは
増大しています。これらのリスクに対処するためには、まずリスクを正しく認
識し、その上で継続的なセキュリティ対策を行うことが不可欠です。
本白書は、保険ビジネスに関わる組織にとって有用な指針と言えます。新たな
脅威や未知の脅威に柔軟に対応し、安心・安全なデジタル社会を構築するため
の基盤作りが強く求められています。
本白書の詳細は、IPAのウェブサイトからダウンロードできますので、ぜひご
参照ください。
URL: https://www.ipa.go.jp/publish/wp-security/2024.html
K System Planning
島田洋之