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保険の虫眼鏡(第2回)

 

自動運転車の登場による保険への影響

 

自動運転車の登場によって「自動車保険が大打撃を受ける」と心配する声を聴く。収入保険料の6割以上が自動車保険と自賠責保険であるから、その気持ちはよく理解できる。

保険事業への影響を少し掘り下げて考えてみよう。保険会社の場合、自動運転車の登場によって、おそらく今よりも事故は減るだろうから料率の低下によって保険料規模は縮小していくと予想できる。しかし、料率の算定は過去のデータをベースに行われるから、トレンドによる修正を施すとしても料率改定は後追いになる。後追いの期間、損害率は予定値を下回り保険会社の利益は増加する。つまり保険料下げのデメリットよりも損害率低下のメリットの方が大きい。

一方、代理店の場合は単にデメリットを被ることになる。なぜなら、料率低下は単に手数料の減少をもたらすからだ。保険事業への影響といっても製造を担う保険会社と販売を担う代理店では、自ずと影響の度合いが異なるのである。

ところで、本当に心配するほどの影響が生じるのであろうか。まずは自動運転車がどれほど広がっていくかという問題がある。販売が開始されても、価格が高いと消費者の支持は得られないだろう。ドライブそのものを楽しむ層は購入を嫌うかもしれない。鳴り物入りで登場した新商品がいつの間にか消えていくのはよくあることだ。

また、自動運転車が登場するとしても、そのスタート時点においては圧倒的に多くを今まで通り人間が運転する車が占めている。自動運転車の増え方は放物線を描くような形であろう。自動車事故には車対車の事故が多くを占めるが、相当の期間、自動運転車にとって相手が普通の車という状態が続くのである。

さらに、これに交通事故被害者の救済をどう行うべきかという制度問題が絡んでくる。製造物責任(PL)によって自動運転車の事故についてはメーカーの責任になるなどと安易に決めることはできない。製造物責任は絶対責任ではない。製品に欠陥があることを被害者が立証しなければメーカーに責任は発生しない。立証責任の重さを考えると、自動運転車に関する何らかの制度的手当てが必要になるだろう。このようなことを考えれば考えるほど、少なくとも一気に自動車保険が消滅するという心配は成立しそうにないのである。

 

日本損害保険代理業協会アドバイザー

栗山 泰史