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■保険システムよもやまばなし 

第26回: 「最近のIT動向(3)」

 中国武漢市に端を発した新型コロナウイルス感染拡大は、封じ込めに向けた取組が進められているものの、未だ留まるところを知らずの勢いで、世界経済にまで影響を及ぼすようなリスクになりつつあります。種々の取組が功を奏し、沈静化することをただただ祈るばかりです。


 さて、今回のよもやまばなし、「最近のIT動向」と言うことで、損害保険各社におけるデジタル戦略や具体的施策について触れていくことにしています。まずは、3メガ損保におけるデジタル戦略について触れていきたいと思います。最近の中期経営計画や経営戦略には、必ずITやデジタル戦略計画が含まれており、相当な人材や資金等の資源を投入しています。ITに係るコストは各社一千億円を超えるとの話も聞こえてきます。大変な投資だと思います。

 いずれの計画でも、「テクノロジーを活用した事業構造改革を目指す」とし、具体的には「シンプル・スピーディな業務プロセス構築による徹底的な業務効率化」、「ビジネスモデル変革・市場創造」を掲げ、「未来に向けて」とか、「デジタル変革に果敢に立ち向かう」とか、失敗を恐れない、スピード感を持って取り組む等威勢のいい言葉でキラキラしていますが、一方で、それによる成果物や効果については、なかなか明確に読み解くことは出来ず、経営を担う皆さんのご苦労いかばかりかと思ってしまいます。各社の年頭社長あいさつを見ると、それぞれITやデジタルのことに触れられていますが、その表現からご苦労されていることをうかがい知ることが出来ます。そうした中にあって、東京海上日動火災:広瀬社長の年初メッセージの「デジタル・テクノロジーなど今ある仕組み、あるいは、新たな仕組みを徹底して使い倒していくことが必要です。」にある“使い倒す”という言葉が妙に新鮮に聞こえました。

 こういったメガ損保各社の取組は、経済産業省が積極的なIT利活用に取組んでいる企業として選定・公表している「攻めのIT経営銘柄」(注1)に選定されたり、公益社団法人企業情報化協会が“ITを高度に活用したビジネス革新
”に顕著な努力を払い成果を挙げたと認めうる企業に授与するIT賞対象として認定される等それなりの高い評価を受けています。(注2)

 それでは、各社はどのような取組を具体的に行っているのか見ていきたいと思います。昨今の各社のいろいろな取組については、ネット上で確認することが出来ますが、多くはAIやブロックチェーン、ビッグデータ等新しい技術の採用やベンチャー、プラットフォーマー等との共創・連携等の情報が線香花火のように飛び散っている感じで、各社がどこに向かおうとしているのか全体像を確認・把握することは容易ではありません。そこで、各社のIT動向の全体像を把握できるように、少し時間軸を広げて、また対象を広げて見ていきたいと思います。時間軸はこの5年前後を意識し、対象は「デジタイゼーション、デジタライゼーション」を意識して、①「基幹業務(業務:整流化・可視化・効率化)、②代理店・③契約者向け(顧客接点:拡張・強化・経験値最大化)、④その他(ビジネスモデル変革)」の視点で見ていきます。なお、ベースとなる情報は各社が発表しているもの、ネットや業界誌等で公開されているもので、後は私の独断と偏見にてとりまとめてあります。そのため、間違いもあろうかと思いますが、その際は、お許しください。

【MS&AD】
 ①基幹業務システム
 ・契約管理プロセス再構築中。(2020年目途?)
 ・「損調システム再構築(パッケージベース)」に取組中
 ・テレマティクス技術を活用した事故対応システム開発AD:2019/08)
 ②代理店向けシステム
 ・MS-1 順次刷新中
 ③契約者向けシステム
 ・お客さまWebサービス
 ・見守るクルマの保険(ドラレコ型)
 ・三井ダイレクト
 ④その他
 ・DXに向け、事務・システムに着眼し、多くのスタートアップと連携
 ・保険API順次提供中
 ・クラウドベースSOE構築、拡張展開中

【SOMPO】
 ①基幹業務システム
 ・基幹系再構築「未来革新」:プロセス刷新、商品見直し、
  マイクロサービスベースSOR実現に取組中
 ・損害、再保険システム等再構築取組中
 ②代理店向けシステム
 ・SJNK-NET、アイタス
 ・代理店システム基盤刷新
 ③契約者向けシステム
 ・マイページ
 ・DRIVING(ドライビング!)
 ・セゾン自動車
 ④その他
 ・デジタル戦略プロジェクト推進中
 ・多くのスタートアップと連携。LINE、Trov対応等実現
 ・クラウドベースSOE構築、拡張展開中

【東京海上】
 ①基幹業務システム
 ・基幹契約管理(「抜本」・「SPS」)、損害システム再構築終了
 ・会計、再保険等既存システム刷新・再構築に取組中
 ・脱ホスト取組中(2030年目途)
 ②代理店向けシステム
 ・Tnet、モバイルTnet
 ・代理店システム刷新取組中(2020年目途)
 ③契約者向けシステム
 ・マイページ
 ・モバイルエージェント
 ・DAP(ドライブエージェント パーソナル)
 ・イーデザイン
 ④その他
 ・スタートアップと連携
  ドコモやSNS連携による保険販売や保険契約手続き等実現
 ・保険API順次提供中
 ・クラウドベースSOE構築・拡張展開中

  各社の取組を時間軸・対象を広げて俯瞰的に捉えることで、各社がどこに向かおうとしているのか把握・理解することを目指しています。次回は、さらに個々の特徴的な取組について掘り下げていきたいと思います。

K System Planning
島田洋之 


(ご参考)
(注1)攻めのIT経営銘柄
経済産業省は、東京証券取引所の上場会社の中から、新たな価値の創造、経営革新、収益水準・生産性の向上をもたらす積極的なIT利活用に取り組んでいる企業を「攻めのIT経営銘柄」として選定・公表している。
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/keiei_meigara/keiei_meigara.html

(注2)IT賞
IT賞は、わが国の産業界ならびに行政機関などの業務における事業創造、効果的ビジネスモデルの構築・促進、生産性向上等、“ITを高度に活用したビジネス革新”に顕著な努力を払い成果を挙げたと認めうる企業、団体、機関お
よび個人に対して、公益社団法人企業情報化協会が授与するもの。
https://www.jiit.or.jp/im/award.html