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■保険システムよもやまばなし 

第27回:「最近のIT動向(4)」

 コロナ騒動、未だ収束の兆しも見えず、世界レベルでの移動規制や経済への影響等大きな問題にもなりつつあります。 

「2020年のブラックスワン」:“想定外の出来事でひとたび発生すると甚大な影響をおよぼす事象“ 襲来と危機感を表している経済紙もあるようです。この事態を地球的問題として、人類の英知を結集して臨み、少しでも早く収束されることを祈っています。

  さて、保険システムよもやまばなし「最近のIT動向」では、損害保険に係るシステムがどこに向かっていくのか把握・理解しようと、まずは、元受け保険会社(3メガ)のシステム化動向を俯瞰的、かつ深堀りしていこうとしています。対象は、①基幹系、②代理店、③契約者向け、④その他 の観点から、各社の取組状況を見ていきたいと思います。なお、ベースとなる情報は各社が発表しているもの、ネットや業界誌等で公開されているもので、後は私の独断と偏見にてとりまとめてあります。そのため、間違いもあろうかと思いますが、その際は、お許しください。

まずは、「①基幹系システム」。
このシステムの対象としているのは、保険会社の基本的な業務「保険引き受けから保険金支払いに係る業務」とし、次のようなシステムを含めています。
・契約管理システム(新規、異動、更改、満期管理等)
・損害処理システム(事故受付、見積もり、支払い処理等)

●進化する技術とシステムの歴史
これらのシステムは、保険会社でコンピュータを活用し始めた頃から、営々と築き上げて来たシステムで、主に業務効率化や正確性向上、お客さまサービス向上等を目的に費用対効果を開発可否判断基準として来たものです。ベースとなっているシステムは、1980年頃メインフレームコンピュータ中心とした技術で開発されたオンラインシステムであり、そのシステムに対して、商品改定・追加や機能改訂・追加を積み重ねて来ました。また、この間のパソコンやサーバー、ネットワークに係る技術革新をビジネスに適用・活用し、OCR技術による申し込みデータ入力や、インターネット技術による代理店計上、インターネット保険販売等に対応していきました。

●システム・業務プロセス刷新
上記のように、1980年頃開発したシステムに、商品や機能追加を積み重ねて来ていましたので、システムの柔軟性や拡張性に種々の課題が生じ始め(俗に言う、「スパゲッティ状」・「古い温泉旅館風」システム)、さらなる技術革新の恩恵を享受できなくなる懸念、社内世代交代に伴うスキル維持・醸成の懸念などからシステム刷新の必要性が謳われ、各社システム刷新に取組んでいきました。

最初に取組んだのが、東京海上日動でした。既に旧聞に属した話になってしまいますが、「抜本改革」です。単なるシステム刷新ではなく、「シンプル」と「代理店中心」をキーワードに、「商品・事務・システム 三位一体の大変革」に臨み、事務作業効率化、社内カルチャー変革を実現していきました。
投資コスト600億円超。2010年に新システムを稼働させました。その後も、契約管理系システムの柔軟性・開発効率向上に向けて、メインフレーム技術依存脱却を目指した「Simple Process System」構築を進めていきました。また、損害処理においても、パッケージベースの損害調査業務システムに刷新し、ペーパーレス化・デジタルプロセス化、損害サービスの一層の品質向上と業務プロセス変革を実現していきました。
このような取組は、SOMPO、MS&ADグループにおいても行われており、SOMPOでは次世代損保基幹システム再構築『未来革新プロジェクト』として、予算規模約1500億円、7年計画で進めています。また、MS&ADでは、業務プロセス改革の下で、「オンラインシステム刷新」・「商品・事務の共通化」や「損害サービスシステム」構築に予算規模約1600億円を投じて進めています。両社いずれも、現在、取組を進めており、マイクロサービスやAPI等今日的なシステムコンセプト、最新技術を活用・駆使したシステムの構築が期待されるところで
す。

上記の基幹システムがベースになって、代理店向けや契約者向けシステムが実現していきます。次回以降、これらの取組状況についてお伝えしていきたいと思います。

しかし、基幹系システム再構築に1500億円もの金額、数年の年月をかける!改めて、システムにはお金、期間を要するものだと思います。最近、『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 -史上最大のITプロジェクト「三度目の正直」-』という書籍が出版されました。メガバンク勘定系システム再構築について書かれた書籍です。その中に、メガバンクの勘定系システム再構築に要したコストや工数について次のように触れられていました。半端な数字じゃありませんでした。金融業が情報装置産業と呼ばれる所以であるかもしれません。
 ・三井住友銀行  :  2万人月、1000億円
 ・三菱UFJ銀行 : 14万人月、3300億円
 ・みずほ銀行   : 35万人月、4000億円

K System Planning
島田洋之