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■保険システムよもやまばなし 

第30回:「最近のIT動向(6)」

 新型コロナウイルス感染、ようやく緊急事態宣言解除になりました。そうは言っても、日々の感染者数推移に一喜一憂したり、外出自粛の呪縛からなかなか解放されませんが、これからのwithコロナ:ニューノーマル生活に向けた新しいチャレンジに果敢に立ち向かっていければと思っています。明るい未来に向けて、治療薬やワクチンの早期開発、コロナ感染症の早期収束を切に願います。

  さて、保険システムよもやまばなし、前回は番外編「withコロナ・Afterコロナに向けて」をお伝えしましたが、これまでは、「最近のIT動向」として、損害保険に係るシステムがどこに向かっていくのかを見定めようと、元受け保険会社(3メガ)のシステム化動向を俯瞰的かつ深堀りすべく、①基幹系システム、②代理店向けのシステムにスポットをあててきました。今回はその延長線で、「お客さま体験価値」を意識した契約者向けのシステムに焦点をあててみたいと思います。

●「お客さま体験価値」
「お客さま体験価値」、最近よく目にする言葉です。CX(カスタマー・エクスペリエンス)とも言われます。商品・サービスそのものが有する価格や機能
・性能だけでなく、顧客の商品選定局面における情報提供や対応(リアル・ネット接点での対応)、商品購入決定・購入局面における対応、商品購入後の利用局面、アフターサポート、さらには買い替え局面に及ぶ一連の流れの中で顧客が感じる価値やメリットのことを指します。この、商品選定・購入・利用等の各局面もしくは一連の流れの中で、顧客が得る・感じる価値やメリット:「お客さま体験価値」を意識・把握し、顧客の共感・感動、「心の満足」を満たし向上させながら、潜在顧客から見込客、既存客、優良顧客へという、継続的により良い関係を構築していくために活用していこうとする動き生じています。以前から、お客様の期待を超える「感動品質」と言った言葉がありました。その言葉を具現化出来ている例もありますし、一方で、“お客さまの期待を敏感に感じ取り、それを上回る「感動品質」を提供していこう!”と言った抽象的表現・掛け声に終わってしまった例もあるようです。しかしながら、デジタル化が進み、あらゆるモノや場所からデータの収集・分析することが可能となる中で、顧客行動や思考までをも可視化し、これまで以上に顧客に寄り添ったアプローチが実現できるようになってきています。

ソニー損害保険株式会社では、同社の「お客様本位の業務運営方針」の中で、「お客さまに価値を感じていただける商品・サービスの提供」を取組方針の一つとして掲げ、「お客さまに価値を感じていただける商品やサービスの開発に取組んでいます。さらに、各お客さま接点を通じたカスタマーエクスペリエンス(お客さま体験)の向上による、お客さま価値最大化に向けた取組みを進めてまいります。」とコミットしています。

3メガを見れば、MS&ADでは、経営計画の重点戦略の一つに「デジタライゼーションの推進」を掲げ、「顧客体験価値の向上と業務生産性の向上に資する3つの主要取組(DX:デジタル・トランスフォーメーション、DI:デジタル・イノベーション、DG:デジタル・グローバリゼーション)を推進し、グループの持続的成長を促進する」としています。また、SOMPOでも、「デジタル」の積極的活用の中で、新しい顧客体験価値の創造と、真のサービス産業の実現を目指すべく、グループ全体でデジタル変革を起こすとしています。
東京海上でも、代理店システムやイーデザインの方向性を語る中で、「顧客体験価値」の創出・向上を行っている・目指していることを明言しています。

これだけですと「抽象的表現・掛け声」の範疇になってしまいますので、もう少し具体的な、「お客さま体験価値」を意識した契約者向けのシステムに話を進めたいと思います。

●「③契約者向けシステム」
損害保険会社の提供するシステムで契約者と直接接点を有するのは、次のよう
なシステムです。
・お客さまWEB・マイページ
インターネット経由で利用できる、各お客さま専用のインターネットサービス。契約内容の確認・変更、事故の連絡などを可能としています。3メガ、
それぞれ同じようなサービスを提供していますが、特筆すべきは東京海上:「モバイルエージェント」。マイページと連携するスマホアプリで、“お客様との新たなデジタル接点”、として位置付け、より使い易い・見易い・顧客
に寄り添う点をアピールしています。
・代理店システム
(2020年4月)保険システムよもやまばなし 第28回にて詳述。
・ドライブレコーダー 
MS&ADは「見守るクルマの保険(ドラレコ型)」、SOMPOは「ドライビング!」、東京海上は「ドライブエージェントパーソナル」と、それぞれ自動車保険の特約として、安全運転サポート・運転診断・事故対応サポー
ト機能を有するドライブレコーダー機器を提供しています。

上記のシステムの作り方や、最近の各社の取組を見ていると、損害保険各社は顧客との接点(オフライン、オンライン)を如何に増やそうとしているか、各システムで得られる顧客に関する情報を集約・分析し「お客さま体験価値」:CX(カスタマー・エクスペリエンス)を如何に引き出そうとしているかに力
を注いでいるかを読み取ることが出来ます。その点を最も分かり易く表しているのが下記の東京海上日動火災のニュースリリースに記載された文章だと思います。
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お客様の契約や事故の情報だけでなく、コールセンター、リアルな接点(お客様との対面の機会)、デジタル接点(モバイルエージェント・契約者向けマイページ等)などで得られたあらゆる情報を、お客様ごとに統合・集約できるデジタルプラットフォームを開発・導入します。

これらの取組みを通じて、「お客様との多様な接点の構築と活用」「代理店のお客様対応力の向上」「当社内の業務プロセス改革の進展」を実現し、当社と代理店の持続的な成長につなげてまいります。
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(【2019年4月】デジタルを活用した代理店ビジネスの更なる付加価値の向上に向けて~第二弾:代理店システムの大幅リニューアル及びデジタルプラットフォームの導入~ より抜粋 
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/release/pdf/190418_01.pdf

各社同様の取組を行っており、2020年はいろいろな取り組みの成果が少しずつ現れてくると思います。今回の新型コロナウイルスパンデミックによりデジタル化の流れが一層早まることも予想されます。お客様とのデジタル接点が主流になって来るかもしれません。ニューノーマル時代の顧客接点、「お客さま体験価値」:CX(カスタマー・エクスペリエンス)にどう対応していくか目が離せない感じです。次回は、保険システムよもやまばなし「最近のIT動向(7)」として、各社のデジタル活用の取組について触れてみたいと思います。

K System Planning
島田洋之