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■保険システムよもやまばなし 

     第31回: 番外編「withコロナ:ニューノーマル生活下での集合研修」

 コロナ禍の大雨!大きな被害が出ています。亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

 さて、新型コロナウィルス感染関連では、5月25日の緊急事態宣言解除、その後、政府が示した4ステップに準じて、段階的に社会経済の活動レベルが引き上げられ、7月10日からは「ステップ3」が始まります。ようやく活気も戻ってくるかと期待していますが、連日の感染者数の発表に、改めて「withコロナ:ニューノーマル生活」の現実を突きつけられている感じもします。こういった中、ある処から、「緊急事態宣言解除に伴い、集合研修を再開したいのでアドバイス願いたい」とのお声がかかり、その対応を行う事に。いざ対応し始めると、これまで想定していないようなことの連続に驚くことばかり。

 そこで、今回の「保険システムよもやまばなし」。「各社のデジタル活用の取組」についてお伝えする予定にしていましたが、この分野もコロナでいろいろな動きが出始めている最中のようですので、この状況については、もう少し見定めたうえでお伝えすることとし、今回は、テーマを番外編第二弾「withコロナ:ニューノーマル生活下での集合研修」に変更してお伝えしたいと思います。

■この時期に集合研修!?
「緊急事態宣言解除に伴い、集合研修を再開したいのでアドバイス願いたい」との相談を受けた際、最初に思ったのが、「この時期に集合研修!?」でした。タイミングは緊急事態宣言解除の頃で、都内の新規感染者数は7人弱/1
週間平均と、今思えば相当抑え込まれた時期でありましたが、それでも「この時期に集合研修!?」と思いました。

 

■他社は?
当時、外出自粛で世の中から隔離、自宅に籠るような生活をしていましたので、まずは、世の中の動向を確認してみました。すると、宣言解除に呼応するかのように、いくつかの会社から集合研修再開案内が出されており、これらの
状況を踏まえると、この時期の集合研修再開はあながち乱暴な判断と言うわけでは無いことが分かりました。特に、研修を生業としているような会社にとっては、研修自粛は経営リスクに影響を及ぼすような事案であり、収益源泉確保の観点から、宣言解除・研修再開を待ちわびていたことを感じました。

 

■安全配慮義務を果たせるのか?
緊急事態宣言解除が出され、段階的に社会経済の活動レベルが引き上げられているからと言って、コロナ感染リスクが無くなったわけではありませんでしたので、次に思ったのは、イベント主催者として「安全配慮義務を果たせるの
か?」でした。そこで、「コロナ感染対策」は大丈夫なのかと確認をしたところ、即座に、各種ガイドラインを参考に「感染源・感染経路を絶つ」の考えの下、研修参加時の健康状況確認と、研修時の「3密(密集・密接・密閉)」の回避、手洗い・清掃の徹底を行います。「十分なスペースの確保」、「十分な換気」を行います。との回答でした。確かに種々のガイドラインに記述されている、また、他社の集合研修で行われているような感染対策は全て行うことになっていることが確認できました。

 

■万全を期す、説明責任を果たす
感染対策が十分行われていることなので、研修開催OKではと思いましたが、再度、社会が三密を避けようとしているこの時期に集合研修を開催することのリスクについて考えてみました。丁度、その頃、今回のコロナ感染を予言していたのではと言われている新型インフルエンザパンデミック小説「首都感染」(高嶋哲夫)を読んでいましたので、その中の、「ウイルスは人を区別するわけじゃない。等しく平等だ。隙を見せた者が捕まる。」という言葉が心に引っかかっていたからかもしれません。災害心理学でいう正常化バイアス(「自分は大丈夫!」「まだ大丈夫!」)を排除して、改めて考えると、この状況下で感染予防対策に万全を期したとしても、ウィルスを完全に排除することや、感染リスクをゼロにすることが出来るわけでないことは明らかです。まずは、研修生を含む研修関係者の安全の確保のためになすべきこと、出来ることは全て行い、万全を期すこと。そして、その取組状況や残存リスクについての説明責任を果たすことが必要と思えました。

 

■「十分な・・」では説明できない
説明責任を果たすべく、まず自分で納得すべきと思い、種々のガイドラインを確認し、取組施策をつぶさに確認していきましたが、戸惑ったのが、「3密(密集・密接・密閉)」回避のための「十分なスペース」、「十分な換気」の
文言でした。「十分な」とはどういう意味なのか、具体的にどのように説明できるのか・すればいいのか、悩みました。いろいろな情報を確認しましたが、従来の定員の半分でゆったりご使用とか、窓を開放して換気促進とか、空気清浄機を設置しとか・・ 「私たち頑張ってます」的な感じの表現が多く、説明責任を果たせるような論理性や拠り所を示している例は多くありませんでした。
そこで、拠り所になると思われる関連法規など調べてみると、労働安全衛生法に「気積」やビル管理法に「必要換気量」の考え方があることを知りました。
この場で詳細の説明は避けますが、要は、「労働者の安全と衛生を守る基準」として、一人当たり「10立法メートル」の空間の提供が求められ、また、「建築物における衛生的環境の確保」の観点から一人当たり「30立法メートル/毎時」の換気量の提供が、法律として求められていました。まさに拠り所となる法律があったわけです。研修会場等に適用されるのかまでは確認できませんでしたが、この基準を使用すると、一般的オフィスの天井高は2.5mくらいですから、一人当たりのスペースは4平方メートル。計算上では半径1.2mの円の大きさの場所を提供し、他の人との間隔も2m以上のソーシャルディスタンスの確保が出来ることになります。また、換気量30立法メートル/毎時は、厚生労働省からも、コロナ感染リスク要因の一つである「換気の悪い密閉空間」を改善する一つの基準として推奨されている基準でした。私たちの生活は、こういった法律等により綿々と守られて来ていたのかと、これまでの先人のご努力に改めて敬意と感謝の気持ちを持ってしまいました。こういった取り組みが、日本における「ファクターX」の一つになっているのかもしれません。これらの基準を順守していることを確認することで、十分なスペース・換気量を提供していることを具体的に説明出来ました。

 

■さらなるリスク低減
本研修の開催は、主催者にとっても受講者にとっても、重要かつ貴重な知識・経験習得の場になっており、その再開に、大いに期待も高まっていたのですが、一方で、感染予防対策に万全を期したとしても、ウィルスを完全に排除す
ることや、感染リスクをゼロにすることが出来るわけでないことは前述した通りです。そこで、集合研修同等の研修効果は期待できないものの、リスク軽減策の一つとして、オンライン研修も同時提供することとし、リアルとデジタルを組合わせたハイブリット型研修の実現を図ることになりました。限られた時間の中で一気に、準備を進めて行った研修スタッフの方々のご努力に敬意を表すと共に、こういった環境がアッと言う間に構築されて行ける今日日の技術、環境に改めて驚かされました。これにより、受講者はリスクに応じて適切な研修を選択出来るようになりました。

 

■それでも
万全なコロナ感染対策を取ったとしても、それでも何か起きることは常に想定しておく必要があり、次のような場合の迅速・的確・適切な対応が行える連絡体制、対応要領等(BCP)を明らかにしました。
・感染者発生(受講者、講師・スタッフ等研修関係者)
・濃厚接触者発生(受講者、講師・スタッフ等研修関係者)
・外出・移動自粛要請、緊急事態宣言再発出等

 

■最後は
このように、集合研修開催に向けててコロナ関連リスクについて万全な対策を取り、BCPも含めてその状況や残存リスクについて参加者への説明責任を果たしたつもりですが、最も重要なことは、主催者と受講者・参加者が一体となって、日々コロナに真正面から立ち向かうことに尽きると思いました。
主催者は、集合研修開催にあたってのコロナ関連リスクを十分認識し、万全の対策を施す。受講者・参加者も、研修参加にあたってのコロナ関連リスクを十分認識し、自らを守ると共に、主催者の示した守るべきルールをしっかり守
る。両者共々、コロナに対して「正当に怖がる」こと(注)、リスクに応じた適切な振る舞いをおこなうことが、「withコロナ:ニューノーマル生活下での集合研修」になっていくのだと思った次第です。
(注)「ものを怖がらなすぎたり、怖がりすぎたりするのはやさしいが、正当に怖がることはなかなかむつかしい(寺田寅彦)」

このメルマガを書いている最中に、千葉の「衛生専門学校」でのクラスター発生が報道されました。医療関係者がコロナ感染対策に細心の注意を払ったうえでの開催であったとのこと。万全な体制、まだまだ改善・進化させていく必要があるかと思います。「withコロナ:ニューノーマル生活」、これからです!

 

【参考にしたガイドライン】
・厚生労働省 新しい生活様式ガイドライン 「新しい生活様式」の実践例
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_newlifestyle.html
・経団連:オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン
 https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/040_guideline1.pdf
・学習塾事業者における新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン
 http://www.town.mibu.tochigi.jp/docs/2020051900027/files/juku.pdf
・新型コロナウイルス感染症に対応した学校再開ガイドライン
 https://www.mext.go.jp/content/20200406-mxt_kouhou01-000006156_1.pdf
・ボランティア向け研修等における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン第1版 2020年6月16日
 https://www.volasapo.tokyo/column/feature/2169/ 

・新型コロナウイルス感染症制御における「換気」に関して 緊急会長談話・「換気」に関するQ&A
 http://www.shasej.org/recommendation/shase_COVID20200323.pdf
 http://www.shasej.org/recommendation/shase_COVID_ventilizationQ&A.pdf
・日本医師会 COVID-19有識者会議 新型コロナウイルス感染症制御における「換気」に関して
 https://www.covid19-jma-medical-expert-meeting.jp/topic/1729
・熱中症予防に留意した「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気について
 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000640920.pdf
・上手な換気の方法~オフィス・店舗編~
 https://www.daikin.co.jp/air/life/ventilation/office/index.html
・新型コロナ エアコンの「風」で飛沫流れ感染 CDCが事例報告
 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200605/k10012458661000.html
・夏のエアコン、飛沫拡散に注意 専門家は換気呼びかけ
 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60063910V00C20A6EA1000/

K System Planning
島田洋之