​Column Back number

■保険システムよもやまばなし 

第33回: 「コロナとデジタル化」

 コロナ、猛暑、台風といろいろな禍が次々と襲来しています。被災された皆さまには心よりお見舞い申し上げると共に早期復興を祈るばかりです。コロナの収束も心から願い、祈っています。

 さて、この保険システムよもやまばなしでは、2019年12月から「最近のIT動向」と題して、損害保険に係るシステムがどこに向かっていくのかを見定めようと、元受け保険会社(3メガ)のシステム化動向を俯瞰的かつ深堀りすべく、①基幹系システム、②代理店向けのシステム、③契約者向けのシステムについて語って参りました。途中、コロナ禍が発生し、「withコロナ」番外編を3話さしはさみ、今回の「保険システムよもやまばなし」では、「最近のIT動向(7)」として、「各社のデジタル活用の取組」についてお伝えしようとして
いました。

 当初は、各社の「①基幹系システム」、「②代理店向けのシステム」、「③契約者向けのシステム」の取組をお伝えし、それを踏まえて各社の「デジタル戦略」や「デジタル活用の取組」に触れていこうと想定していましたが、
今回のコロナ禍による新しい生活様式環境下で、各社においては、様々な「デジタル活用の取組」を始めています。その取組は、これまで着々と準備を進め、この機に満を持して始めるものや、取り敢えず緊急避難的に行われているもの、もしくはこの機会に新たな展望を持って一気呵成に行おうとしているもの等様々です。いずれにせよ、従来とは全く異なる次元でデジタル化の取組が行われ始めている感じがします。そこで、「最近のIT動向」を「コロナとデジタル化」と題を改め、装い新たに話を進めて行きたいと思います。
 
■コロナ禍で何が起きたか
この件については、5月の「保険システムよもやまばなし」番外編
「withコロナ・Afterコロナに向けて」にて、次のような点をお伝えしました。
  ①【新型コロナウィルス感染状況】  ⑤【やるなら今でしょ!】
  ②【新しい生活様式】        ⑥【Afterコロナに向けた布石】
  ③【損害保険業界での動き】        ⑦【ここだけは気を付けて!】
  ④【今、何をなすべきか】、            

詳細は、ここをご覧ください。
⇒ https://www.isnetwork.co.jp/mailmagaginebacknumber-s29
 
若干重なる点もありますが、当時を振り返りながら話を進めていきます。これまでのコロナ関連で、何と言ってもインパクトが大きかったのは、政府の緊急事態宣言発出(4月7日)だったと思います。政府から、人と人との接触
機会の削減に向けて、国民に対して不要不急の外出自粛、そして各事業者に対して在宅勤務の推進、出勤者の最低7割削減の要請が出されました。このような政府要請を踏まえて、損害保険業界においては、すぐに次のような対応が行われました。
  ●在宅勤務(テレワーク)・時差出勤の推進、会議・研修の中止・延期
  ●お客さまと直接対面しない営業(非対面営業)・オンライン相談の開始

 

■従来の延長線的取組:在宅勤務(テレワーク)
「在宅勤務(テレワーク)・時差出勤の推進、会議・研修の中止・延期」の実現にあたっては、従来から政府の重要施策「働き方改革」(労働力不足を解消させる為多様な働き方を可能にする社会を目指す)の一つであり、特に「テレワーク」は東京オリンピック開催期間中の混雑対策として想定されていたこともあり、各社において仕組や制度の準備は進められており、従来の取組の延長線的な取組として、大きな混乱もなく速やかにスムーズに実現が進んでいった印象です。中には、想定以上の社員が一気に利用することになり、ネットワークやサーバーの容量、利用者数制限等の拡充・拡張に追われた会社もあったようです。「テレワーク」を実現しても、各社員が自宅で出来る業務の範囲は各社の有する仕組みにより異なります。これまで社内業務プロセスを着々と整備し、この機会に満を持して一気に「業務プロセス改革」の実現まで図っていこうとするところや、一方で、「テレワーク」の体裁は実現しているものの、単なるメール交換や社内掲示板的情報の連携・共有に留まり、業務遂行に必要な処理プロセス・システム機能まで対応がなされておらず、在宅勤務というより自宅待機的な対応になっていたところもあったようです。コロナ禍を契機に、各社の有する業務処理基幹系システム・情報共有系システムの優劣が表面化・顕在化し始めた感じもします。

 

■一歩踏み込んだ取組:お客さまと直接対面しない営業(非対面営業)
「お客さまと直接対面しない営業(非対面営業)・オンライン相談の開始」の実現にあたっては、非常事態宣言を受けて損害保険協会から発信された「契約手続き業務および保険金支払い業務等については、原則、非対面で継続し社会のインフラとしての機能を維持します」のメッセージを契機に、各社において、これまで不正な保険契約の発生を防止するために制約を設けていた「デジタル面接やオンライン募集」を、コロナ禍に伴う時限措置として容認していこうとする、コロナ禍を大義名分に一歩踏み込んだ取組も始まりました。「非対面」でありながらも、お客さまと直接お会いしているようなコミュニケーションを確保出来るデジタルの仕組みを活用することで、「デジタル機器を活用した面談」を実現し、募集人・お客さま双方にメリットのある、「顧客本位の業務運営」を実現する取組で、今後大きな潮流になっていくものと思われます。
この分野においては、各社の有する代理店向けシステム・契約者向けシステムがその威力を発揮する場面でもありますが、ここにおいても、各社のこれまでの取組の差が、使い勝手や処理可能対象業務に現れ、お客さま対応力と言う大切な点にも影響を及ぼし、仕組・システムの優劣がお客さまに直接問われる時代になりつつある感じもしています。

 

■損害保険業界のデジタル・DXへの取組
さて、このコロナ禍による新しい生活様式の出現で、損害保険業界においては「在宅勤務(テレワーク)」や「非対面営業」が一気に進み始め、この流れはさらに大きなものになって行くと思われますが、これが損害保険業界のデジタル化・DX化の取組ということになるのでしょうか。新聞やインターネット等を介して損害保険各社の動向を見てみますと、このコロナ禍において緊急避難的とも思われる上記の取組を含め様々な分野での多岐に渡る取組を見出すことが出来ます。まさに、これからが正念場の様相を呈しています。

 

【損害保険関連各社の種々の取組】
 ・AIチャットボットを活用したお客さまお問い合わせ利便性向上
 ・スマホによる簡単契約手続き(新規・継続)、事故連絡受付
 ・AIやドローン、ドライブレコーダー、人工衛星等を活用した保険金処理プロセスの迅速化・効率化
 ・自動運転関連分野での連携・協働
 ・Insurtech先進企業との連携・協働
 ・AI、ビッグデータ、iotセンサー関連企業との連携・協働
 ・DX関連企業との連携・協働 等々

 

一方、「今回のコロナ禍で、図らずも明らかになったのが、我が国のデジタル化の遅れである。」との文言が、本年7月に閣議決定された「統合イノベーション戦略2020」※の冒頭に出てきました。これまで、日本のデジタル化の遅
れ、DXの取組の遅れは、経済産業省の提唱する「2025年の崖」(2018年)で声高に言われ、それに促されるように、多くの企業がデジタイゼーション・デジタライゼーションの取組を進めて来ていましたが、「統合イノベーション戦略
2020」では、この取組を国を挙げて進めなければならないと、さらに強い口調となっており、今後、国の施策として、これまでDX化推進の障害や制約事項などの排除・整備も進み、我が国のデジタル化・DX化のスピードが一層早まって行くと思われます。

折も折、今朝(2020年9月9日)の日経新聞に、「スマホアプリを主軸とした保険代理店の設立」の記事が掲載されていました。損害保険業界における、デジタル化・DX化、今後、いろいろな取組が顕在化していく予感がします。
次回以降、「コロナとデジタル化」の視点で、各社の取組に焦点を当てていければと思います。

※「統合イノベーション戦略2020」(2020年7月17日閣議決定)
⇒ https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/index.html
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①デジタル化(抜粋)
我が国では、第5期基本計画において、世界に先駆けてサイバー空間とフィジカル空間の融合により人間中心の社会を実現する”Society 5.0”というコンセプトを打ち出したが、今回の感染症対応において、図らずも明らかになった
のが、我が国のデジタル化の遅れである。国際的な俯瞰的レポートでも、我が国のデジタル化は、世界各国と比べて遅れていると分析され、特に、ビッグデータの活用、国際経験の不足、企業の変化対応力が弱いと指摘されている。
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4.重点的に取り組むべき課題(抜粋)
特に、今回の危機を我が国社会のデジタル化への転換を一気に進めるきっかけとし、産業構造や働き方などのライフスタイルも含めた社会基盤・ルールをデジタル化に対応させ、経済社会活動の可能な限りサイバー空間への移動を実現させるデジタル・トランスフォーメーション(DX)、いわば「デジタル遷都」とも言える取組を国を挙げて進めなければならない。
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K System Planning
島田洋之