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保険の虫眼鏡(第20回)

 

「自動運転」の自動車保険への影響(その1)

 

 「これから自動車保険はどうなっていくんだろう。」今、「自動運転」の進展の中で、多くの代理店がこうした不安を抱いている。

損保協会が発行する「ファクトブック2016」によれば、2015年度の業界全体の正味収入保険料は8兆3597億円、そのうち自動車保険は3兆9987億円と全体の47.8%を占めている。自賠責保険の1兆367億円を加えれば、実に全体の60.2%が自動車保険なのである。多くの代理店において、代理店手数料の相当程度のウエイトを自動車保険が占めているのは事実である。

そのような中で、自動車自体が、激しい速度で「自動運転」に向かって突き進んでいる。「自動運転」の拡大・普及は自動車保険に大きな影響を与えるのは確実である。時には、自動車保険はなくなり、自動車メーカーのPL保険がその代わりをすると考える人さえいる。しかし、事はそんなに単純なことなのであろうか。

 

自動運転の「技術」

 

少し冷静になって、これからの自動運転の進展についてみてみよう。これを考える場合、「技術」「時間」「消費者ニーズ」の3点に分けるべきである。まずは、「技術」である。

自動運転には4つのレベルがあるとされる。レベル1は「加速・操舵・制動のいずれかの操作をシステムが行う」、レベル2は「加速・操舵・制動のうち複数の操作を一度にシステムが行う」、レベル3は「加速・操舵・制動をすべてシステムが行い、システムが要請した時のみドライバーが対応する」。レベル4は「加速・操舵・制動をすべてシステムが行い、ドライバーが全く関与しない」と整理されている。

2030年頃にはレベル3の自動車が1050万台、レベル4の自動車が56万台、衝突回避や車線逸脱防止等のADAS(先進運転支援システム)搭載自動車に至っては全販売台数の41.5%を占めるとの予測がある(日経新聞2016年6月15日電子版)。これほど急速に、「技術」は「完全自動運転」のレベル4に向かって進展しているのである。

 

技術と普及の「時間」のズレ

 

しかし、「技術」の進展がどんなに速くて、現実の普及とは相当のズレがあるのは確かだ。「時間」の進行を考えると、まずはクルマの買い替えサイクルが長くなっている。そして、さらに中古車市場の存在も視野に入れることが必要である。新たに製造するすべてのクルマが自動運転車の時代においても従来型のクルマは一定期間、走り続けるのである。

 

多様な「消費者ニーズ」

 

次に、「消費者ニーズ」についても考慮に入れなければならない。価格が手が届くレベルになるまで多くの消費者は手を出さないであろう。農村地域のみを走るクルマは、高齢者の送迎用などを除けば自動運転車に代わるとはとても思えない。一般家庭でもセカンドカーは従来のクルマでよいとの判断があるだろう。

そして、併せて重要なのは「運転が好きな人」の存在である。実際にこれを反映して、自動運転車は「自動運転」と「手動運転」がモードで切り替えられることになっている。

このように考えると、「技術」の進展の速度は普及の速度とは一致しないことが分かる。2017年2月7日の日経新聞1面にトヨタの目指す方向として、次のように記している。「自動運転では一部のIT企業が無人運転に注力するが、トヨタはあくまでも、ドライバーを支援し、交通事故を減らすことを目的とする。クルマ本来の走る楽しみを提供しつつ、環境・IT分野でも世界を先導する。」自動運転の技術はクルマの技術のすべてではない。あくまでもその一部に過ぎないのである。

今回は、自動運転そのものに関して考察した。次回は、これが自動車保険に与える影響に関して考察してみたい。

 

日本損害保険代理業協会アドバイザー

栗山 泰史