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保険の虫眼鏡(第22回)

 

「自動運転」の自動車保険への影響(その3)

 

 今回も前回に続き、自動運転の自動車保険への影響について考えてみたい。ここまで、「技術」、「普及」、「保険」の3つの要素があり、時間軸の目盛りが異なること、描かれる図はいずれも放物線であるが、その形に違いがあることを述べた。すなわち、「技術」はすごいスピードで進展するが、「普及」は相当程度ゆっくりしたものになること、さらに保険の場合はゼロからの出発ではなく現在がピークでここから台形のような形で下降し、その速度は普及率よりもさらにゆっくりした放物線になるということである。

 

自動車保険はPL保険では代替できない

 

 そして、保険において、自動車保険がPL保険に入れ替わるのではないかという見方について否定的な見解を述べた。製造物責任は製品の「欠陥」が責任発生の要件であり、交通事故の被害者が欠陥を立証しなければメーカーに責任は発生しない。「事故が起こったらすなわちメーカーの責任」というような安易な解決策をメーカーが受け入れるわけがない。

また、自動運転の車において生じる事故は欠陥以外にも様々な原因が考えられる。例えば、手動運転モード時の運転ミス、道路や信号の不具合、気象条件、サイバーテロ、歩行者や他の車の過失などだ。いずれの場合もメーカーのPL保険に頼っていては、被害者の速やかな救済に支障が生じてしまう。被害者救済システムの維持を考えると、現在の自賠責における「運行供用者責任」にみられるような責任の集中を図ることが最後まで必要になるであろう。

 

自動運転における自動車保険の役割

 

 自動運転技術がどんなに進展しても「自動と手動のモード切り替え自動車」やセカンドカーなどの存在によってすべてが自動運転車になることはあり得ない。仮に、すべての車が自動運転車に代わる時代が来たとしても、交通事故が車の欠陥のみではなく、道路や信号等の不具合、気象条件、サイバーテロ、歩行者や他の車の過失など他の原因によって生じることを考えれば、第一次的な責任者として「運行供用者」のような存在を置いておくことが必要になる。

簡単にいえば、まずは自動車の持ち主や搭乗者が責任を負い、それに関しては自動車保険で対応することによって、被害者救済など速やかに解決すべき案件を処理してしまう。そこから先は、保険金を支払った保険会社が、車の欠陥の場合は自動車メーカーに、道路の結果の場合は公共団体等に、その他の原因の場合はその原因者に、プロとして求償するという形が妥当であるということだ。もちろん、サイバーテロや気象条件のようにどこにも求償できないものもある。

この場合、特に自動車メーカーへの求償に関しては、技術が高度にブラックボックス化している中で、保険会社としても困難を極めるだろう。そこで、中立の第三者機関のような技術に関する専門組織を設立することを検討すべきかもしれない。このあたり、現状では、まだまだあまりにも検討すべき課題が多すぎる。いずれにしても、自動車が存在する限り、それが自動であろうとなかろうと交通事故がなくならない限り自動車保険は必要なのである。

 

自動運転の自動車保険への影響

 

このように考えていくと、自動運転の自動車保険への影響は、事故が少なくなっていく、場合によってはほとんどなくなっていくことによる保険料の低下に絞られると考えてよい。この点をどう見るかが重要である。

事故という時、これは二つの要素に分解される。「頻度」と「損害の程度」である。滅多に起こることはないが起こると大災害になるというケースもあれば、高い頻度で発生するが一回当たりの損害額は小さいというものもある。このように要素に分けて考えた場合、自動運転の自動車保険に与える影響はどのように評価すべきなのであろうか。次回は、この点について考えてみたい。

 

日本損害保険代理業協会アドバイザー

栗山 泰史