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保険の虫眼鏡(第24回)

 

「自動運転」の自動車保険への影響(その5)

 

自動運転の進展によって、自動車保険がなくなることはないものの保険料単価は低下していくものと思われる。その速度は、自動運転の技術の速度ほどには速くない。しかし、普及が進むとともに自動車事故が全体的に減少することで保険料も低くなっていくだろう。

これに伴って、保険会社には損害率が低下することによる利益が生じる。しかし、代理店にとってはそのメリットはあまり期待できないため(手数料ポイントに損害率要素を入れる可能性はあるが、微々たる効果しかないだろう)、保険料の低下分がそのまま手数料の低下につながることになる。

 

火災保険にみる前例と自動車保険における革新

 

 

かつて、火災保険が建物構造の変化や都市の消防力の強化等によって保険料単価の下落を経験した際、純保険料と事業費の関係が「あんこと皮」に例えられた。つまり、純保険料という「あんこ」が小さくなり、事業費という「皮」ばかりが厚くなった魅力のない保険というわけである。

「あんこと皮」の問題を解決するために、保険会社が講じた対策が、火災保険の総合保険化である。火災だけでなく自然災害を含む様々な事故を総合的に補償する形にしたのである。また、それまでのように時価を保険金額とするのではなく、新価や価額協定をベースに保険金額を決定するという仕組みが登場した。さらに、モノの損害ではなく利益の減少に着目し、利益保険という新しい分野の保険のウエイトが高まるようになった。

自動運転の技術によって、おそらく自動車は今とは全く異なる自動車とは言えない「別の何ものか」に変わって行く。自動車保険においても、火災保険と同様に自動車保険としての変化が生じることは十分に考えられるのである。代理店は顧客との接点にいる。顧客の新しいニーズを常に追いかけ続け、それを保険会社とともに新しい保険の開発につなげていくことが重要である。

 

新たな歴史的トレンド

 

しかし、自動車保険の進化以上に重要なことがある。それは時代の流れに従うということである。多くの代理店にとって自動車保険は収益上、大きなウエイトを占めている。しかし、それはかつてのモータリゼイションの流れが生み出したものだ。モータリゼイションこそが保険会社と代理店の収益構造を劇的に変えたのである。

保険という仕事に携わっているものとして、モータリゼイションに代わる大きな波はないのだろうか。おそらくそれは「少子高齢社会」である。歴史的なトレンドの変化を考えた場合、やはり、活路は第三分野を含む生命保険にあるのではないだろうか。

イメージで恐れるほどには自動車保険の減少は生じない。しかし、確実に代理店経営における自動車保険のウエイトは減少の方向に向かう。富士フィルムという会社は、デジカメの登場によってフィルムが消えても、堂々とした存在感を示している。会社の価値を持続的に高める経営戦略があったからだ。

保険事業に関わる分野でも、世の中には必ず新たな動きが生じ、それに伴って安全と安心を脅かす事象が生まれる。「少子高齢社会」が自動車保険に代わるほどの保険資源となるかどうかは分からない。しかし、保険に留まることのない様々なサービスを組み合わせた総合的なソリューションの提供という観点で臨んだ場合、そこには保険事業に携わるものにとって大きな資源が横たわっているように感じられるのである。

 

日本損害保険代理業協会アドバイザー

栗山 泰史