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保険の虫眼鏡(第25回)

 

保険事業における三つの大変化

 

人が刻む時間には二つの種類がある。一つは、日々の生活における時間、もう一つは、歴史に関わる時間である。この二つの時間軸の目盛には大きな違いがある。歴史時間の目盛は大きく、日々の生活の目盛は小さい。歴史的な動きは、日々の生活においては見えにくい。

 

長くゆるやかな「産業革命」

 

「産業革命」はまさに歴史的な動きであった。ブリタニカ国際大百科事典によれば、「通常は 18世紀後半から 19世紀前半にかけてのイギリスにおける技術革新に伴う産業上の諸変革,特に手工業生産から工場制生産への変革と,それによる経済・社会構造の大変革を産業革命と呼ぶ。」とされている。これがもたらした社会構造上の変化について、ウイキペディアは、「1760年代から1830年代までに及ぶ非常に長くゆるやかな変化であったが、産業革命以前と以後において社会の姿は激変していた。」と記している。

70年にわたる「非常に長くゆるやかな変化」こそが産業革命の実相である。始まりの頃に誕生した人は、これを革命だと気付くことはなかっただろう。その人にとっては「革命」ではなく、いつもの「日常」だったはずだ。誰もが急激な変化と感じることのない中、確実に産業構造が大きく進歩する一方で、ラッダイト運動と呼ばれる機械の打ち壊しなど歴史に残る退行を経ながら、確実に社会は、それまでとは根本的に異なる新しい形に変化していったのである。

 

三つの大変化

 

 2017年という今、保険事業に携わるものは皆、「革命」ともいうべき大きな変化の中にいる。一体、その変化は、どのような変化なのだろうか。

 大きな三つの変化が生じている。一つ目は、保険業法の改正による新しい保険募集ルールの登場である。1996年、金融ビッグバンの下で行われた保険の自由化は、20年の時を経て、2016年に保険募集制度改革が実施されることで完結の時を迎えた。この20年の間に、保険会社は大きな変化を遂げ、さらに変化の度合いを大きくし始めている。そして今、ついに代理店が主役となるべき大変化が到来しているのである。

 二つ目は、金融行政の改革である。ルールからプリンシプルに軸足を移し、金融事業者に自主的な「顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)」を求めるという、これまでの金融庁とは大きく異なる新しい方針が打ち出されている。体制整備義務の法定によって独立した事業主体となった代理店は、今や金融事業者の一角を占めることになったというべきであろう。金融事業者としてこれにどう対応するか、自らのスタンスを決めることが求められるのである。

 三つ目は、自動運転技術の加速度的な進展とInsurTechの広がりの中で、これまでの保険事業のあり方が大きく変化しようとしていることである。テレマティクス自動車保険が少しずつ広がり始めたというのは実に些細な現象に過ぎない。その背後には、「破壊的革新(Disruption)」と称される劇的な変化が潜んでいる。

 この三つの大変化が重なり合い、歴史的転換ともいうべき状況が生まれる中に、2017年という年は位置付けられるのである。

 

RINGの会オープンセミナー

 

 7月1日、今年も「RINGの会オープンセミナー」が開催される。

➡ http://os.ring-web.net/

このセミナーは今回で19回目になるが、全国各地から代理店と保険会社の社員が集まり、近年の入場者数は1500人内外に及んでいる。これだけの規模になると収容能力の点で会場が限定され、今年もパシフィコ横浜国立大ホールで開催される。

今年のテーマは「適者生存~歴史的転換の中で生き残り、成長を遂げる」である。三つの大変化を底流に置いて、三部構成のパネル・ディスカッションが行われる。パネラーから何が飛び出すか、ぜひこのセミナーに参加して直に感じて欲しい。RINGの会オープンセミナーが、代理店経営の羅針盤の役割を果たすことになればと考えている。

日本損害保険代理業協会アドバイザー

栗山 泰史