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保険の虫眼鏡(第27回)

 

顧客本位の業務運営(その2)

 

 前回、「フィデューシャリー・デューティー」に関し、今に至る経緯を辿った。今回は、これをもう少し先まで進めてみよう。

 

金融庁における動き

 

金融庁がこの言葉を初めて使ったのは、2014年9月11日に公表された「金融モニタリング基本方針」、次が、2015年9月18日に公表された「平成27事務年度金融行政方針」、ここまでは、「フィデューシャリー・デューティー」と英語での表示になっている。

そして、2016年10月21日に公表された「平成28事務年度金融行政方針」において、「金融機関等による顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)の確立と定着」という形で、「フィデューシャリー・デューティー」は、「顧客本位の業務運営」という言葉に「意訳」されることになったのである。そして、次の四つの柱が示された。

①フィデューシャリー・デューティーのプリンシプルの確立と定着

②顧客が直接・間接に支払う手数料率(額)及びそれがいかなるサービスの対価なのかを明確化

③商品のリスクの所在等の説明(資料)の改善

④金融機関による顧客本位の取組みの自主的な開示の促進

 

「顧客本位の業務運営に関する原則」

 

 こうした流れを受けて、金融庁は、2017年1月19日に「顧客本位の業務運営に関する原則(案)」を公表、これは2月20日を期限とするパブリックコメントを経て、2017年3月30日に内容が確定している。ここでは、以下の「7つの原則」が示されている。

①顧客本位の業務運営に係る方針等の策定・公表等

②顧客の最善の利益の追求

③利益相反の適切な管理

④手数料の明確化

⑤重要な情報のわかりやすい提供

⑥顧客にふさわしいサービスの提供

⑦従業員に対する適切な動機付けの枠組み

 

金融審議会における検討

 

この7つの原則の元になったのは、金融審議会市場ワーキング・グループが2016年12月22日に公表し「国民の安定的な資産形成に向けた取組みと市場・取引所を巡る制度整備について」と題する報告書である。市場ワーキング・グループは、2016年4月19 日の金融審議会総会において金融担当大臣からの諮問を受けて設置されている。諮問内容は「情報技術の進展その他の市場・取引所を取り巻く環境の変化を踏まえ、経済の持続的な成長及び国民の安定的な資産形成を支えるべく、日本の市場・取引所を巡る諸問題について、幅広く検討を行うこと」というものである。

同グループは、同年5月から12 回にわたり、①国民の安定的な資産形成と顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)、②国民の安定的な資産形成におけるETFの活用とインデックス運用の位置付け、③取引の高速化、④市場間競争と取引所外の取引、⑤取引所の業務範囲について、審議を行っている。最初に掲げられているのが「顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)」であることに注目する必要がある。

 

 今回は、顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)に関する事実関係を辿ってみた。無味乾燥な内容に感じられるかもしれない。しかし、まずは事実をしっかりと認識することから始めなければならない。

 

日本損害保険代理業協会アドバイザー

栗山 泰史