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保険の虫眼鏡(第29回)

 

顧客本位の業務運営(その4)

 

 顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)に関する第4回である。今回も前回に引き続き、2017年3月30日に内容が確定した「顧客本位の業務運営に関する原則」について述べてみたい。

本件に関しては、金融庁のHPに3月31日付で『「顧客本位の業務運営に関する原則」の確定について』と題する告知が掲載されている。http://www.fsa.go.jp/news/28/20170330-1.html

 

ここでは、三種類の文書が公開されている。「別紙1」が1月19日から2月20日にかけて行われたパブリック・コメントの結果を受けた「コメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方」、「別紙2」が本原則に関する「本文」、「別紙3」が「『顧客本位の業務運営に関する原則』の定着に向けた取組み」となっている。

 

顧客本位の業務運営の経緯と背景

 

別紙2の本文の冒頭に「経緯及び背景」が記されており、これを読むと金融庁が考えていることが見えてくる。実際には、金融審議会の市場ワーキング・グループが2016年12月22日に公表した報告書の引用であるが、その内容は以下の通りだ。

「これまで、金融商品の分かりやすさの向上や、利益相反管理体制の整備といった目的で法令改正等が行われ、投資者保護のための取組みが進められてきたが、一方で、これらが最低基準(ミニマム・スタンダード)となり、金融事業者による形式的・画一的な対応を助長してきた面も指摘できる。

 本来、金融事業者が自ら主体的に創意工夫を発揮し、ベスト・プラクティスを目指して顧客本位の良質な金融商品・サービスの提供を競い合い、より良い取組みを行う金融事業者が顧客から選択されていくメカニズムの実現が望ましい。そのためには、従来型のルールベースでの対応のみを重ねるのではなく、プリンシプルベースのアプローチを用いることが有効であると考えられる。具体的には、当局において、顧客本位の業務運営に関する原則を策定し、金融事業者に受け入れを呼びかけ、金融事業者が、原則を踏まえて何が顧客のためになるかを真剣に考え、横並びに陥ることなく、より良い金融商品・サービスの提供を競い合うよう促していくことが適当である。」

 

「プリンシプルベース」と「ルールベース」

 

 いくつかのカタカナで表記された言葉が出てくるが、キーワードは「プリンシプルベース」であり、これに対置される言葉として「ルールベース」が出てくる。この二つの言葉の説明として最も適切と考えられるのが、2007年9月19日付、金融庁佐藤隆文長官(当時)名の文書「金融規制の質的向上:ルール準拠とプリンシプル準拠」である。ここでは、この二つの言葉を次のように説明している。

「ルールベースのアプローチはある程度詳細なルールや規則を制定し、それらを個別事例に適用していくということですが、例えば行政の恣意性の排除あるいは規制される側にとっても予見可能性の向上といったことが期待されます。(中略)これに対してプリンシプルベースのアプローチは規制対象の金融機関が尊重すべき重要ないくつかの原則や規範を示したうえで、それに沿った行政対応を行っていくということです。金融機関の自主的な取り組みを促進する、あるいは金融機関の経営の自由度を確保するといった点でメリットの大きいものです。(中略)プリンシプルベースとルールベースのアプローチは、相互に排他的であるよりはむしろ相互補完的なものであると思っています。」

 プリンシプルベースとルールベースのアプローチを金融行政の歴史の中に位置付けてみると、さらに見えてくるものがある。次回は、それに焦点を当てて論を進めてみたい。

 

日本損害保険代理業協会アドバイザー

栗山 泰史