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保険の虫眼鏡(第32回)

 

顧客本位の業務運営(その7)

 

前回、保険代理店として「顧客本位の業務運営に関する原則」にどのように対処するべきかに関して、以下を指摘した。

①保険代理店は「金融事業者」に該当すると考えるべきこと(金融庁のパブコメ25では「保険代理店が排除されるものではありません。」と回答)

②従って、保険代理店としては「顧客本位の業務運営に関する原則」を採択するかどうかの検討を行うことが必要なこと

③採択する場合には、明確な方針を策定・公表するとともに、当該方針に係る取組状況を定期的に公表すべきこと、かつ、当該方針は定期的に見直されるべきこと

④「定期的に」という場合の頻度に関しては、「年に一度」の取組状況の公表とその際に見直しの検討を行うことが必要になること(パブコメ45)

 

原則を採択する場合

 

保険代理店が「顧客本位の業務運営に関する原則」を採択する場合、まず必要なことは自らの言葉と表現で「顧客本位の業務運営を実現するための明確な方針」を作り上げることである。それに際しては、金融庁が公表した三種類の文書のうち「別紙2」の中で次のように留意事項を示している。

 

原則2~7に示されている内容について、

 ・ 実施する場合には、原則に付されている(注)も含めてその対応方針を、

   ・ 実施しない場合にはその理由や代替策を、

      分かりやすい表現で盛り込むことが求められる。

 ・自らの状況等に照らして実施することが適切でないと考える原則があれば、    一部の原則を実施しないことも想定しているが、その際には、それを   「実施しない理由」等を十分に説明することが求められる。

 

金融庁がこれまでに打ち出した代表的なプリンシプルとして、コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードを上げることができる。これらの場合、民間事業者は、定められた内容を、単に「遵守する」と表明するだけで足りる。これに対し、今回の原則は、単に「遵守する」と表明するだけでは形にならず、具体的な対応方針を金融事業者自身で表現することが求められているのである。

方針の策定に当たり、原則2から7のうち、一部の原則を実施しないという選択もあり得るのだが、その場合には、「実施しない理由」等を十分に説明しなければならない。例えば、原則4は「手数料等の明確化」である。保険代理店の場合、代理店手数料の開示に関して様々な動きがある中で、これについては採択するかどうかに拘らず対応に難儀することになるのではないだろうか。この問題に関しては、追って、原則4に関する解説の中で記したい。

 

KPIの問題

 

原則の採択に当たり、もう一つ難儀するのは「KPI」である。これは、Key Performance Indexの略で、公表文書「別紙3」の「『顧客本位の業務運営に関する原則』の定着に向けた取組み」の中で示され、日本語としては「顧客本位の業務運営の定着度合を客観的に評価できるようにするための成果指標」と説明されている。

いわば「数値目標」のようなものと考えるべきであるが、これに関しては、金融事業者が指標を定めた場合、「各金融事業者の取組方針と、取組みの実態が乖離していることは無いか等について、当局がモニタリングを実施し、モニタリングを通じて把握した事例等については、様々な形での公表を検討」とされているのである。「数値目標」がモニタリングの対象ということになると、多くの金融事業者が大いに怖気づくのはよく理解できるところである。

 

日本損害保険代理業協会アドバイザー

栗山 泰史