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保険の虫眼鏡(第33回)

 

顧客本位の業務運営(その8)

 

この間、「顧客本位の業務運営に関する原則」について記している。この原則に関して、3月31日付で金融庁HPに『「顧客本位の業務運営に関する原則」の確定について』と題する告知が掲載されたことは既に述べた。

この告知の別紙3「『顧客本位の業務運営に関する原則』の定着に向けた取組み」では、「金融事業者の取組の『見える化』を促進する観点から、金融庁としても、本年6月末から当面四半期ごとに、顧客本位の業務運営を実現するための明確な方針(以下「取組方針」という。)を策定した金融事業者の名称とそれぞれの取組方針のウェブサイトのアドレスを集約し、金融庁ホームページにおいて公表することとします。」とされている。

 

金融庁によるリストの公表

 

これに対応する形で金融庁は、7月28日付(8月1日更新)で「『顧客本位の業務運営に関する原則』を採択し、取組方針を公表した金融事業者のリストの公表(第1回)について」をHPに掲載している。これによれば、採択した保険代理店は6月30日時点で14社である。ちなみに金融事業者全体では469社、都市銀行等50、地域銀行及びその銀行持株会社101、協同組織金融機関等(信用金庫等)6、保険会社等(保険代理店14社を含む)74、金融商品取引業者等(証券会社等)238という内訳である。

 

KPIに関する公表内容

 

併せて、前回記した「KPI(Key Performance Index):顧客本位の業務運営の定着度合を客観的に評価できるようにするための成果指標」に関しても次のように取り上げている。

「取組方針と併せて、顧客本位の業務運営の定着度合いを客観的に評価できるようにするための成果指標(KPI)についても一定数の金融事業者が公表しました。金融庁としても、これらの策定・公表を働きかけてきたところであり、こうした動きを歓迎いたします。」

 KPIに関しては、さらに次のように踏み込んだ見解を示している。

「KPIの内容については様々ですが、その中には投資信託の販売方針等を踏まえて、その金融事業者が目指す販売等の方向が相当程度端的に示されると考えられるKPIも見られ、これらは好事例と言えるものではないかと考えられます。」とし、「投資信託の販売額上位10銘柄」や、金融庁がこの間「目の敵」にしている毎月分配型投信に関する「投資信託販売に占める毎月分配型の販売額とそれ以外との比較」、原則3の「利益相反の適切な管理」に関連する「投資信託販売額に占める自社グループ商品の比率」などを好事例として掲載している。

そして、「各金融事業者におかれましては、上記のような好事例なども踏まえながら、まだ取組方針やKPIを公表していない金融事業者についてはその公表を、既に公表している金融事業者については、必要に応じてその更なる改善に努めていただくようお願いいたします。」とし、最後に「金融庁としては、引き続き、金融事業者における業務運営の実態についてのモニタリング等を通じて、金融事業者による主体的な取組みを促してまいります。」と、多くの金融事業者がKPI策定に当たって身構えているモニタリングとのリンクに触れて全体を締め括っている。

 

日経新聞による解説

 

2017年8月2日付の日本経済新聞朝刊は、「顧客本位の運営、判断材料は? 客観指標『KPI』各社で特色」と題し、金融庁の公表に伴い記事を掲載している。

同記事によれば、金融庁が好事例としたKPIは三井住友フィナンシャルグループと三井住友トラスト・ホールディングスのものとのことである。同記事は、「三井住友FGのKPIは、投資信託の販売額上位10銘柄について足元と5年前との比較や、投信販売に占める毎月分配型とそれ以外との比較を時系列で出している。投信販売額に占める自社グループ商品の割合も一目瞭然だ。三井住友トラストも投資信託残高に対する分配金の割合を市場平均と三井住友信託銀行を並べて表示。長期的な資産形成ニーズに対応しているか視覚的にわかるようにした。」とし、三井住友FGリテール企画部長の「宣言した内容を守れているかを検証されるわけで、これからが大事」という言葉を引用している。

他では、三菱東京UFJ銀行の「役職員のファイナンシャルプランナー(FP)資格の取得率の推移」を紹介し、みずほフィナンシャルグループは「今秋の公表に向けて準備中の段階」と記している。

金融庁の公表や日経新聞の記事をみると、「顧客本位の業務運営に関する原則」の採択の有無とともに、次第にKPIをどのように定めるかが焦点になっていることが理解できるのである。

日本損害保険代理業協会アドバイザー

栗山 泰史