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保険の虫眼鏡(第36回)

 

顧客本位の業務運営に関する原則(各論1)

 

過去10回にわたり「顧客本位の業務運営(フィデュシャリー・デューティー)」に関して記してきた。これまでは「総論」的な内容であったが、以降は、「顧客本位の業務運営に関する原則」における個々の原則の内容、すなわち「各論」に着目して記すことにしたい。

 

ルールからプリンシプルへ

 

「各論」に入る前に、今一度、現在の状況について確認しておきたい。

足下のところで、保険を含む金融行政のあり方が大きく変わり始めている。かつての大蔵省の時代、「箸の上げ下げにまで行政が口を出す」とされた実体的監督主義が金融庁の登場の頃にルール・ベースに変わった。一時、ルールとプリンシプルのミックスがよいとされ、ベター・レギュレーションと称される時期はあったものの、全体的にはルール・ベースがずっと続いてきたといってよいであろう。これが、本格的にプリンシプル・ベースに変わるのである。

そして、この時に、保険業法改正によって代理店の体制整備義務が法定された。代理店は、これまでのように保険会社の「庇護」の下にいることはできず、直接的に金融庁の監督に晒されるのである。保険行政の変化は、代理店の経営においてきわめて重要な影響を与えることになる。保険会社には金融庁を担当する部門があるが、これからは代理店も、HPをしっかりとチェックするなど、金融庁の動きを注視するよう心掛けるべきといえるだろう。

 

アンバンドリングへの流れ

 

保険行政の変化と期を一にしてFinTechやInsurTechと呼ばれる動きが生じている。デジタル社会の進展や金融とITの融合の中で、銀行や保険会社は従来と同じようなビジネスのスタイルを大きく変えることになるかもしれないという局面を迎えている。

例えば、保険会社は、募集、引受、損害調査、再保険業務、資産運用などの業務を一体的に行っており、誰もが「保険会社なんだから全部やるのは当たり前のこと」と考えてきた。ところが、技術革新によって新しいビジネスモデルが次々と生まれ、保険会社も自前主義ではなく、いわゆるスタートアップと称される企業など、外部との連携により業務を行う方がよいという環境になり始めている。いわゆる「オープン・イノベーション」である。こうなると、保険会社による一体的な業務運営ではなく、個々の業務が切り離され、それぞれが保険会社だけでなく様々な会社によって運営されることになる。これが「アンバンドリング」「リバンドリング」という動きである。

 

根本的な保険行政の変化

 

金融庁の側からみれば、「保険会社が監督の対象」というこれまでのやり方が通用しないという事態が生じる。今の段階で、どうするべきかという結論は出ていないが、プリンシプル・ベースへの転換に止まらない、もっと根本的な変化が保険行政に生じるかもしれないのである。日経新聞2017年10月13日朝刊一面トップに掲載された「フィンテック普及へ新法」という記事はそうした変化の一つといえるだろう。

保険行政の変化は、新しい保険募集ルールの登場、InsurTechの動きとの連関の中で捉えるべきものである。そして、この間、テーマにしている「顧客本位の業務運営(フィデュシャリー・デューティー)」は、これから始まる新しい保険行政のコアに位置付けられる極めて重要な動きといえるのである。

 

日本損害保険代理業協会アドバイザー

栗山 泰史