​Column Back number

保険の虫眼鏡(第37回)

 

競争によって実現する「顧客本位の業務運営」

 

10月20日付で、金融庁HPに「『顧客本位の業務運営に関する原則』を採択し、取組方針を公表した金融事業者のリストの公表について」が掲載された。二回目の事業者名の公表であり、今回は9月末時点での採択状況が示されている。

金融事業者全体では736社で前回より267社増加している。保険会社等は137社で63社の増加、そのうち保険代理店は43社で29社増加である。

着実に採択した事業者が増加しているが、保険代理店に関しては、母数の多さと採択したものの多くが来店型ショップであることを勘案すると、圧倒的に多くが模様眺めという状況にある。もちろん、そもそもこうした動きを知らないものが数多く存在することが確かであるから、一定規模以上の代理店、中でも「規模の大きい特定保険募集人」は採択する、しないの結果は別にして、組織的な検討は行っておくべきであろう。

 

競争原理の導入

 

前回に続き、今回も「そもそも論」のようなことを記してみたい。

「顧客本位の業務運営に関する原則」(以下、「原則」)の背景には、「規制」から「競争」への転換がある。ルール・ベースの場合、事業者はルールに従っている限り、金融庁から何か言われるということはない。しかし、ルールを守らなければ金融庁の行政処分によって、最悪の場合、保険市場からの撤退を要求される。すなわち、「規制」によって適格性のない事業者を市場から排除するということである。

一方、プリンシプル・ベースの場合、金融庁はプリンシプル(原理・原則)を示すだけで、そこから先は事業者の自由な選択に委ねられる。「顧客本位の業務運営」を個別に、独力で策定し、その優劣が市場で試される。すなわち、事業者間の「競争」によって優秀な事業者のみが勝ち残るということである。

ルールだけであれば、誰もがそれを守るというだけで競争にはならない。ところが、プリンシプルの下では競争が始まるのである。一時、「ベターレギュレーション」という動きはあったものの、実質的にはルール一辺倒できた金融行政が競争原理を活用するというのである。

ただし、ベースとなる競争の「コア」は金融庁が示すので、その下で競争せよというところが、プリンシプルが有するからくりなのである。そして、「コア」こそが「顧客本位の業務運営」である。

 

自分自身で作るべきもの

 

保険会社も代理店もともに金融事業者ではあるが、「原則」の採択を強制されているわけではない。採択するかどうかは自由、「原則」に沿っている限り内容も自由、だけど人には頼らず自分自身で作れ、いったん作った限りはそれを実現するためにKPI(「Key Performance Index」の略。顧客本位の業務運営の定着度合を客観的に評価できるようにするための成果指標)で管理せよ、というわけである。

このように見て行けば、損保協会や日本代協のような業界団体が事業者のためにモデルを作ること、また、保険代理店だからといって保険会社に委ねるということを金融庁が否定的に見る(パブコメ41参照)のは当然のことなのである。

 

日本損害保険代理業協会アドバイザー

栗山 泰史