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保険の虫眼鏡(第4回)

 

代理店手数料の開示の動き

 

 代理店手数料の開示について動きが生じている。現時点では、開示の対象は保険業法上の「特定保険契約」に限定され、また、保険販売チャネルとしては、金融機関の窓口販売に限定されるようである。

ちなみに、「特定保険契約」とは、「金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動により損失が生ずるおそれがある保険契約(保険業法第300条の2)」と定義されており、保険業法ではなく金融商品取引法が適用される。生命保険協会では、主なものとして、変額個人年金保険、積立利率変動型個人年金保険、外貨建保険を挙げている。

こうした動きが、手数料率全体の開示につながると懸念する向きがある。しかし、これに関しては、金融審議会の「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」が2013年6月11日に公表した報告書において一定の結論を出している。

具体的には、「現時点において、一律にこれを求める必要はない」とした上で、今後の展開において「手数料の多寡を原因として不適切な比較販売が行われる事例が判明した場合には、手数料開示の義務づけの要否について、改めて検討を行う」こととしている。こうした結論に至ったのは、業法改正によって比較推奨販売を行う乗合代理店の体制整備義務が法定されたことで、「保険商品の比較販売において、一定の適切な体制が整備・確保される」からである。

そして、新しい保険募集ルールを受けた金融庁の監督指針においては、「形式的には客観的な商品の絞込みや提示・推奨を装いながら、実質的には、例えば保険代理店の受け取る手数料水準の高い商品に誘導するために商品の絞込みや提示・推奨を行うことのないよう留意する。(Ⅱ-4-2-9(5)の(注)1)」旨が明記されている。

 アメリカやEUにおいて手数料開示について議論が積み重ねられているが、その理由は「コミッション・バイアス」といわれる高い手数料の保険への誘導という弊害を避けるためである。確かに開示によって、消費者は目に見える形で「コミッション・バイアス」から救われるが、弊害を避ける方法は開示のみというわけではない。新しい保険募集ルールの下での比較推奨販売を行う乗合代理店への厳しい規制は、まさにもう一つの方法なのである。

さらに、金融機関における比較推奨販売において、特定保険契約と一緒に店頭に並ぶ商品は、投資信託等の金融商品である。金融商品が完全に手数料の開示を行っているのに対し、保険は不開示ということではイコール・フッティングの観点からも問題があるだろう。

 普通の保険の場合、手数料が開示されていないことにはそれなりの理由がある。だからこそ、金融審議会の議論でも開示は見送られたのである。今回、特定保険契約における手数料開示が実現するとしても、それは金融商品における手数料開示の一環として行われるものであり、保険全体の手数料開示の前兆と捉えることは論理のすり替えというべきであろう。

 

日本損害保険代理業協会アドバイザー

栗山 泰史