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保険の虫眼鏡(第41回)

 

地震保険を知っていますか?

 

あけましておめでとうございます。

この間、ずっと、「顧客本位の業務運営」に関連することを取り上げてきました。まだまだ書くべきことはあるのですが、新年でもあり、今回は息の長い話題を取り上げたいと思います。

 

二つの貯金箱

 

 個人の火災保険に付帯する地震保険がどのような保険なのか、正しく理解している人は必ずしも多くない。「政府が支えることで成り立っており、保険会社にとってはノーロス・ノープロフィットの保険」という理解は間違いとはいえないが、実のところ、「そうかなぁ・・・?」という気分になる。

仕組みを簡単にいうとこうだ。保険契約者が支払う地震保険料は、保険会社として一切手を付けることなく、すべてが貯め続けられる。貯める先は、民間の日本地震再保険株式会社と政府の地震保険特別会計(民主党政権時に廃止が検討されたが、東日本大震災によって二度とこれが課題になることはなかった)の二つである。つまり、地震保険料は、他の保険のように個別の保険会社の管理下に置かれることなく、民間(といっても特別の会社だが)と政府の二つの「貯金箱」に納められ、地震が発生した際にのみ「貯金箱」が割られて、保険金が支払われることになっている。

 東日本大震災では、1966年(昭和41年)以来、いくつかの地震で支払いはあったものの、貯まっているお金が民間と政府合計で約2兆4千億円あり、ここから1兆2千億円超が支払われた。従って、その時点でまだ1兆2千億円近く残っており、そこに、東日本大震災の後、新たに地震保険の契約がされる都度、「貯金箱」のお金はまたしても貯まり続け、次の大地震として熊本地震を迎えることになった。

 

非常時は政府から借り入れ

 

 ここで一つ疑問が生まれる。「貯金箱」のお金では足りない大地震が起こったらどうするのか、という疑問である。地震の際、まずは民間の「貯金箱」から支払う。民間の支払限度額を超える大地震になれば、政府の「貯金箱」(地震保険特別会計)から支払う。それでは、政府の貯金箱に貯まっている額を超える大震災が起こった場合にどうするかというのが先ほどの疑問だが、この時には政府の貯金箱(特別会計)が「国の通常の予算」(一般会計)から借入れを行うことになっている。つまり、政府が「貯金箱」に別口のお金を継ぎ足すことで急場をしのぐ。そして、この借入れ部分は、その後新たに入ってくる地震保険料を使って返済することになる。これこそが、地震保険の「ノーロス・ノープロフィット」といわれる仕組みなのである。

 

地震保険のイメージ

 

 二つの貯金箱をベースとする地震保険の仕組みについて、具体的にイメージを見てみよう。出所は少し古いが「財務省地震再保険特別会計に関する論点整理に係るワーキンググループ」での検討の際に使われた資料(2011年9月8日付)である。貯金箱のお金は、地震保険料が新規契約や契約の更改によって毎年1000億円ずつ追加で入ってくると仮定して、次のように変化する。

 1966年の地震保険誕生以来貯まったお金は2.4兆円あり、2011年の東日本大震災の直後、1.2兆円に減少した。このお金は、その後の毎年の地震保険料によって回復し、2041年には3.9兆円となる。しかし、ここで発生する東海3連動地震によって▲0.3兆円にまで落ち込み、政府(一般会計)から赤字分の0.3兆円を借り入れる。その後、借入れを返して、2061年に1.5兆円まで回復した後、首都直下型地震によって▲1.5兆円となり、これも政府から借り入れる。さらに、2143年に5.9兆円まで回復した後、関東大震災の再来によって0.4兆円となる。以下、この資料では、2491年までの期間、大きな地震の度に大幅に減少し、そしてその後に回復していくお金の動きが折れ線グラフで掲載されている。

 

地震保険は自助の制度

 

 もちろんこれは単なるイメージで、実際にこのとおりになることはない。言いたいことは、地震保険は、他の保険のように単年度の保険会社の決算に決して馴染むことのない、長い時間軸の中で運営されているということだ。そして、最終的にここには一円も税金が投入されることはない。「地震保険特別会計(地震保険料)」として「一般会計(税金)」からの借入れが生じても、その後、地震保険料から返済するからである。つまり、地震保険制度は、地震保険の加入者が負担する保険料のみによって運営される、完全に「自助」の制度なのである。  

 

日本損害保険代理業協会アドバイザー

栗山 泰史