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保険の虫眼鏡(第5回)

 

代理店手数料の開示の動き(その2)

 

 前回、代理店手数料の開示について記した。開示の対象は保険業法上の「特定保険契約(変額個人年金保険、積立利率変動型個人年金保険、外貨建保険)」に限定されるべきであり、一般の保険に関しては、少なくとも現時点では開示は行われるべきではないというのが筆者の考えである。

 

 「特定保険契約」と「一般の保険」とは何が違うのだろうか。前者はどうみても保険というよりは金融商品である。だから、募集に関しても保険業法の例外として金融商品取引法が適用されることになっている。金融商品の場合、手数料が高いとその分、購入者へのリターンが少なくなる。だから手数料が小さければ小さいほど購入者に有利な商品ということになる。ところが保険の場合はどうであろうか。手数料がいくらであれ支払われる保険金に差は生じない。

 

保険料は、純保険料と事業費に分けられる。事業費は、さらに保険会社の社費と代理店の手数料に分けられる。事業費がどう配分されるかは事業者内部の問題なのだ。例えば、損保の場合、手数料ポイント制度があるが、これは保険会社と代理店の事業費配分の「ものさし」といってよい。もちろん、この「ものさし」が正確なものかどうかという別の議論はあるのだが・・・。

 

 それにもかかわらず、アメリカやEUにおいて代理店手数料開示の動きが色々な形で出てきたのはなぜだろうか。その理由は、前回も記した「コミッション・バイアス」問題、つまり代理店が高い手数料の契約に顧客を誘導するという弊害が存在するからだ。

 いうまでもないが、この問題は比較推奨販売を行う乗合代理店にのみ関係があり、専属代理店や比較推奨販売を行わない乗合代理店には何の関係もない。もっと関係があるのが保険ブローカーだ。保険ブローカーは顧客の代理人であるから保険会社の代理人である代理店以上にこの問題には厳正に対処しなければならない。だからこそ、改正前の保険業法でも保険ブローカーは、顧客が要求した場合の手数料開示が義務付けられている。

 

 わが国では、今回の保険業法改正において、比較推奨販売を行う乗合代理店に厳しい体制整備義務を課すことで「コミッション・バイアス」問題を解決することにした。そのように結論が出たばかりの今の時点では、一般の保険に関する代理店手数料開示は時期尚早というべきなのである。

 

日本損害保険代理業協会アドバイザー

栗山 泰史