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保険の虫眼鏡(第54回)

 

保険事業にも押し寄せるデジタル化の波

 

2019年が始まりました。今年も「保険の虫眼鏡」におきまして、様々なトピックスを取り上げたいと思っております。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

 

デジタル化の波はいよいよ大きくなっている。デジタライゼーション、デジタルイノベーション、デジタルトランスフォーメーション、デジタイゼーションなど、どこに違いがあるのかよく分からないような英語が当たり一面に満ち溢れている。ともかく、とんでもない大変化が起ころうとしている。

デジタル化は保険の世界にも浸透している。多くの保険関係者の関心は、やはり、InsurTechにあるだろう。最初の一歩はドイツで2010年に始まったフレンドシュアランスとされている。アメリカのレモネードは200億円近い資金を調達して2016年に鳴り物入りで創設された。一方、2014年に革命家チェ・ゲバラの名を冠してイギリスで創設されたゲバラは2017年に業務を停止している。

そして、わが国でも、スタートアップ企業の「株式会社justInCase」が少額短期保険事業者の枠組みを活用して保険引き受け事業を立ち上げている。同社はHPに「保険の悪いイメージを払拭し、インシュアテック(InsurTech)と呼ばれる保険版フィンテック分野でアジア最先端の保険会社を目指しております。」と記し、新しい形の保険会社を目指すことを宣言している。

また、保険募集に関していえば、「同じ仕事の、みんなでつながるクラウド保険」とのキャッチコピーで「みんホケ」を立ち上げた「(株)日本総険」は、保険仲立人(保険ブローカー)という立場を活用することで、これまでわが国にはなかった保険募集の形を目指している。おそらくこのモデルは、イギリスのボート・バイ・メニーであろう。

これらの動きは、全体として「P2P(Peer to Peer)保険」という形で括ることができる。意味は「仲間内の保険」といったところである。いずれもが既存の保険会社への挑戦という色彩を帯びている点に一つの特色を見出すことができる。

一方、既存の保険会社もInsurTechにおける動きに決して負けてはいない。自動車保険におけるテレマティクス自動車保険、健康増進型医療保険、一日単位で加入できる保険などは、InsurTechの流れの中に位置付けることができる保険である。保険会社も、いよいよ本格的にデジタル時代へのチャレンジを開始している。

このように、FinTechと称される金融の世界に比べて、今一歩動きが遅いように見えていたInsurTechにおいても、ついに色々な動きが目立つようになっている。しかし、保険事業へのデジタル化の影響を考えるとき、あえていえば、こうした「派手な動き」に目を取られていると本質的に大切なものを見失うのではないかという危惧の念を抱くのである。特に、保険代理店にとって、何が重要な課題なのかを考えるとその感は一層強くなる。

次回以降、InsurTechの名の下に生じている派手な動きは横において、そもそもデジタル化の下で何が起こっているのか、そして、それが保険代理店にどのような影響を及ぼすのかに焦点を絞って、論を進めていきたい。

 

日本損害保険代理業協会アドバイザー

アイエスネットワーク シニアフェロー

栗山 泰史