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保険の虫眼鏡(第57回)

 

「デジタル化」における二つのキーワード

 

 この間、「デジタル革命」という言葉をベースに連載を続けている。今回は、関連する言葉の整理を行っておこう。デジタル大字泉(小学館)で「デジタライゼーション」を引くと、次のように記載されている。

 

《「デジタリゼーション」とも》デジタル化。デジタイゼーションとほぼ同義だが、特に、情報・技術などのデジタル化が進み、新しいネットワーク社会が形成される過程についていう。デジタル革命と訳されることもある。

 

つまり、この辞書によれば、デジタライゼーション、デジタリゼーション、デジタイゼーション、デジタル革命の四つの言葉は「ほぼ同義」とされている。このうち、デジタライゼーションとデジタリゼーションは英語の発音の仕方であるから、これは同一である。また、デジタル革命は日本語訳であるから、これも消去してよい。となれば、「デジタライゼーション(Digitalization)」と「デジタイゼーション(Digitization)」の二つが残る。

 

この二つの言葉は「ほぼ同義」とデジタル大字泉はいうのだが、「ほぼ」という限りは、やはり違いがあるのだろう。これに関し、日経産業新聞2017年11月28日の記事は次のように記している。

 

デジタル化という言葉は英語では二通りで表現される。「Digitization(デジタイゼーション)」と調査会社のガートナーが提唱した「Digitalization(デジタライゼーション)」だ。(中略)

前者はアナログなものを「0」と「1」で表すデジタルに変換するという意味で使われる。デジタル時計やデジタル放送、デジタル家電などを思い浮かべるとイメージしやすい。企業の中でも1990年代後半から盛んに使われたIT化とほぼ同義で使われることも多い。膨大な紙の資料の電子化や、電子メールやアプリなどの社内システム導入を指す。(中略)

後者はデジタルの力でまったく新しいビジネスモデルをつくり、顧客体験も変えることを指す。既存業界を破壊するほどのインパクトを与えるため、今、デジタル化と叫ばれているのはこちらの意味であることを理解する必要がある。企業そのものの姿が変わるため、業務効率向上の延長線上にこの世界はない。

ウーバーテクノロジーズはタクシーを所有していないにもかかわらず、デジタルの力で新しい乗車体験をつくり出し、シリコンバレーからタクシーを消し去った。ネットフリックスの動画配信サービスは見たいときに見たい場所で見たいコンテンツを選べる。それによりビデオレンタル大手のブロックバスターは経営破綻し、日本の放送業界でも地殻変動が起きようとしている。これこそがデジタライゼーションの衝撃だ。(中略)ドイツが官民を挙げて実現を目指している「インダストリー4.0」がもくろんでいるのもデジタライゼーションだ。(中略)

企業がデジタル化を進めるときには、この二つのデジタル化を明確に分けて理解する必要がある。だが、どちらか一方だけを選ぶという話ではない。業務の効率化(デジタイゼーション)という守りのデジタル化がなされていないと、ビジネスモデルの変革(デジタライゼーション)という攻めのデジタル化もたちゆかない。すべてはよりよい顧客体験のために、である。

 

今回は、少し引用が長くなったが、「デジタル化」というとき、「デジタライゼーション(Digitalization)」と「デジタイゼーション(Digitization)」という二つのキーワードがあることをまずはしっかりと認識することが必要なのである。

日本損害保険代理業協会アドバイザー

アイエスネットワーク シニアフェロー

栗山 泰史