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保険の虫眼鏡(第6回)

 

代理店手数料の開示の動き(その3)

 

 前回、前々回と代理店手数料の開示について記した。この間に水面下で色々な動きが生じている。まず、金融庁の要請によって生保協会が開示を決めた。それが、真偽のほどは定かではないが地銀の反対によって膠着状態になった。これを受けて金融庁は金融審議会の場で検討することとした。正面突破を図ろうとしたかに見える。このような中で、三菱UFJ東京銀行等の大手銀行5行が年明けをめどに自発的な開示を検討しているとの報道がなされた。これらが7月7日までの動きである。

 こうした動きを見て、ネット上での意見を含めて様々な憶測が飛び交っている。しかし、現段階で次の点だけは押さえておく必要がある。

①今回の手数料開示は、「特定保険契約(変額個人年金保険、積立利率変動型個人年金保険、外貨建保険)」に限定される。今後の生保協会による解釈の変更によって対象となる保険商品が拡大する可能性はないとはいえないが、いずれにしても金融商品類似の保険のみである。

②販売チャネルとしては金融機関(銀行、証券)に限定される。ただし、これに関しては、今後の議論の中で、特定保険契約を扱う全チャネルに拡大する可能性があるのではないかと考えられる。

③一般の保険商品に関しては、代理店手数料の開示については行わないというのが現時点での金融審議会での結論である。その理由の一つに、比較推奨販売を行う乗合代理店の体制整備義務が定められたことがある。すなわち、これによって代理店が手数料の高い契約に顧客を誘導するという弊害(コミッション・バイアス)が回避されるので手数料の開示は不要という理屈である。

④諸外国においては手数料開示がなされているという「誤解」があるが、ブローカー手数料の開示と混同されている面が多分にある。現実にはアメリカのニューヨーク州のようなごく一部の例外を除いては代理店手数料の開示は行われていない。長くこの問題を議論してきたEUにおいては、2016年2月23日に発効した「保険販売業務指令」によって、事実上、代理店に関しては手数料の開示は見送りになっている。

 今後、金融審議会での議論などまだまだ動きは続くと思われるが、代理店としては「開示が世の中の流れなのかな・・・」というように安易に流されてはならない。この問題には明確な「論理」が存在する。それは、かつてのような業界保護のための「世の中に出すのが恥ずかしい論理」ではなく、保険が持つ固有の性質に基づく「正当な論理」なのである。特に最大の利害当事者である代理店は、これに関する「論理」を正確に丁寧に説明し続けることが大切であるといわねばならない。

 

日本損害保険代理業協会アドバイザー

栗山 泰史