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保険の虫眼鏡(第61回)

 

保険代理店のデジタル戦略 ― あるベスト・プラクティス

 

 今年の8月15日、第一生命は少額短期保険業者のjustInCaseとの提携によってレジャー保険を販売することになった。第一生命がjustInCaseの保険代理店になって保険を販売するという点では、以前からの損保ジャパン日本興亜やアフラックとの提携と同じである。異なる点は、従来の提携は第一生命の営業職員が保険募集するのに対して、今回は、第一生命が提供する「Snap Insurance」と称されるWebアプリを活用する点だ。justInCaseは、2018年9月に他社のアプリやWebサイトから自社のレジャー保険に申し込める仕組みをAPI化して他社に提供しているが、これを第一生命に提供することになったのである。

 APIとは、Application Programming Interfaceの略で、自己のソフトウェアの一部をWEB上に公開して、誰でも外部から利用することができるようにするというものだ。それによって、自分のソフトウェアに他のソフトウェアの機能を埋め込むことができるようになるので、アプリケーション同士で連携することが可能になる。第一生命とjustInCaseとの提携でいえば、少し乱暴ではあるが、第一生命の提供するアプリをクリックするとjustInCaseの提供するAPIにつながり、スマホのみで完結する形の保険に加入できるというわけである。

 販売する保険はレジャー保険という超短期の保険だ。昔ながらの保険会社の常識からすると「一日保険」のようなものは成り立つはずがなかった。なぜなら、対面募集を前提とすると保険料のほとんどを付加保険料が占めてしまうことになるからだ。つまり、昔ながらの代理店扱いにはなじまないものであった。今回は、第一生命による代理店扱いでの募集だが、Webアプリと保険APIを活用することで、ビジネスとして成り立つことになったというわけである。

 

 ところで、東京海上日動が、超短期の自動車保険「ちょいのり保険」を販売した後、これを全国展開によって最も多く販売した代理店が島根県隠岐の島にあるプロ代理店であることをご存じだろうか。

 justInCaseと第一生命の提携によるレジャー保険の募集は、大会社である第一生命なるがゆえの新ビジネスという印象があるかもしれない。しかし、一方で、従業員総数23名の地域プロ代理店が似たようなビジネスモデルで成功しているのである。成功のカギはデジタル戦略である。この代理店には、「ウェブ事業部」が設けられており、「離島、隠岐の島からの挑戦」とのスローガンで最先端のことにチャレンジしている。まさに、代理店のデジタル戦略におけるベスト・プラクティスの一つとして、「ちょいのり保険」への取り組みは取り上げるべきものではないだろうか。

 

 保険代理店のHP作成などを行う名案企画の土`川 尚己氏は、自らのメルマガに次のように記している。

「『人を介在して保険サービスを提供する』というモデルが大きく変わろうとしています。保険は人だよ、と、これまでの常識を疑うことなく、いや疑うことができずにこれまでの延長線上に未来があると考えるのは、あまりにも独りよがりなのかもしれませんね。(中略)こういう時代だからこそ人が介在して提供する保険サービスを「再定義」しないと、気づいたら取り残されていたということになりかねません。情報収集と分析、そして行動変革あるのみです。」

 デジタル革命の進展の中、保険代理店にとって「システムやITは保険会社に任せておけばよい」という時代は、あっという間に終わりを告げるだろう。保険代理店のデジタル戦略においても「自立と自律」が求められる時代が、すぐそこに迫っているのである。

日本損害保険代理業協会アドバイザー

アイエスネットワーク シニアフェロー

栗山 泰史