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保険の虫眼鏡(第68回)

 

細部に及ぶ金融行政の変化

 

今回は、金融庁の動向に関して整理しながら私見を述べてみたい。

保険業法が改正され、新しい保険募集ルールが登場したのは、2016年5月29日である。保険代理店にとって最も重要な内容は体制整備義務の法定であり、①経営管理態勢、②法令等遵守態勢、③保険募集管理態勢、④顧客情報管理態勢、⑤顧客サポート等管理態勢、⑥外部委託先管理態勢、⑦内部管理態勢の七つの柱から成り立っている。

その後、金融庁は、次の4つの重要な文書を公表している。

①金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)2017年12月15日公表 2018年6月29日確定

②コンプライアンス・リスク管理に関する検査・監督の考え方と進め方(コンプライアンス・リスク管理基本方針)2018年7月13日公表10月15日確定

③金融機関の内部監査の高度化に向けた現状と課題 2019年6月28日公表

④コンプライアンス・リスク管理に関する傾向と課題 2019年6月28日公表

この4つの文書によって、体制整備義務の中心に「コンプライアンス・リスク管理体制」が据えられることが明確になってきた。しかし、そうはいっても、保険代理店の現状を真正面からみれば、特に、「内部監査の高度化」といわれてもそう簡単に実現するものでないことは確かだろう。関東財務局が保険代理店との「対話(ヒヤリング)」を実施したが、こうしたことを通じて、今後保険代理店に関する細部の詰めが行われることを期待したい。

 

金融庁は、上記のような基本方針の確定の後に、さらに各論のところに歩を進めている。2019年12月18日付で「金融検査マニュアル(保険に関しては「保険会社に係る検査マニュアル」)」を全面的に廃止し、これをもって「重箱の隅をつつく検査」を止めることにした。

さらに、金融庁は、同日付で「保険会社向けの総合的な監督指針」の改正を行っている。改正された項目の一つに、「意向把握・確認の方法」がある。従来は、「保険会社又は保険募集人の創意工夫により、以下のア.か らカ.又はこれと同等の方法を用いているか」と記されていたが、これが「保険会社又は保険募集人の創意工夫による方法で行っているか。具体的には、例えば、以下のア.からエ.のような方法が考えられる」と改められた。

似たような中身であるが、「限定的な記述」が「例示(「例えば」)かつ非限定的(「考えられる」)な記述」に書き換えられたことの意味は大きい。元の規定は、「以下のア.か らカ.」に詳細な中身が書いてあるため、「創意工夫による同等の方法」が許されるとしても、誰も実行するはずがなかったのである。ルールベースとプリンシプルベースの相克において、金融庁が、結局はルールベースに重点を置いていたことの象徴のように感じられる部分である。

この改定に関し、金融庁はパブコメ22において、次のように述べている。

「保険会社・募集人等の『行為』について箇条書きで複数の基準を示し、結果として具体的な行為を特定していました。当該改正は、これをプリンシプルの形へ書き換えることで、保険会社が現状の実務を出発点に、より良い実務に向けた創意工夫を進めやすくするためのものであり、保険募集管理態勢の高度化に資するものと考えております。」

細かな話ではあるが、こんなところにも、ルールベースからプリンシプルベースへと変わりつつある金融行政の姿を垣間見ることができるのである。

 

日本損害保険代理業協会アドバイザー

アイエスネットワーク シニアフェロー

栗山 泰史