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保険の虫眼鏡(第69回)

 

アフターコロナとアフターデジタル

 

初めて「テレビ会議」なるものを経験したのは2000年頃のことでした。遠方からの出席者が正面の画像に映し出され、発言者の口の動きと少しずれながら声が聞こえて来ました。

 

今、コロナ禍が世界を席巻しています。そして、緊急警戒宣言が出される中、会議、会合、懇親会など、ことごとくが中止や延期になっています。そんな中、所属するある一般社団の理事会がWEB会議のzoomを活用して行われることになりました。20名足らずの参加者の全員が、自宅または自身の事務所でPCの前に座っており、画面上で全員の顔を観ることができます。資料も画面に映し出されます。もちろん、スマホでも参加できます。

会議の進行において、司会者のみマイクを有効にし、他のものはミュートにします。発言する際に手を上げると全員が画面でそれを確認できます。そこで司会者が指名し、それに従って発言者は自分のマイクのミュートを解除して発言します。会議の進行はもとより、画像の揺らぎもなければ声のずれもない、とにかくスムーズに進むことに驚きました。

 

少し調べてみますと、だからと言ってテレビ会議に意味はないかというとそうでもないようです。WEB会議とテレビ会議の対比をしている記事がありました。しかし、おそらくWEB会議がどんどん進化して、テレビ会議の利点を吸収してしまっていると感じられるほどzoomはすごかったです。

「読めば分かる!Web会議とテレビ会議の違い」TechTarget Japanより抜粋

 

コロナ禍を経て世の中が大きく変わるという話しをよく聞きます。このこと自体に異論はありませんが、少し違和感があります。アフターコロナと称される世の中の変化はコロナ禍が引き起こすものなのでしょうか。

コロナ禍の終息の後、グローバル経済のあり方、中国の位置づけ、財政・金融政策、国際協調の枠組みなど、見直されるべき重要な課題が多く存在します。これらが、コロナ禍がもたらす大きな変化であることは間違いありません。

その一方、コロナ禍を経て世の中が大きく変わる例として、テレワークの進展、オンライン診療の本格化、保険でいえば対面募集の後退とWEB募集の進展などが大きく取り上げられています。先ほどのzoomもそんなものの一つです。アフターコロナの世界で、これらが大きく存在感を増すのは確実です。しかし、これはコロナ禍が生み出したものなのでしょうか。

これらはどれも、コロナ禍ではなく、デジタル革命、すなわちデジタル・トランスフォーメーション(DX)が生み出した世の中全体の大変化の一部です。わが国の場合、行政による規制や社会的慣行などによって諸外国に比べて遅れが目立っていました。これがコロナ禍によって一気に促進されようとしています。つまり、これらの変化はデDXが生み出したものであり、コロナ禍はこれを促進するものであると位置付けるべきです。

かつての産業革命と同様の歴史的大変化であるDXの進展に、同じく歴史的大事件であるコロナ禍が重なっています。DXの進展にどう対処するかという大きな経営課題は、コロナ禍によって、もはや決して先送りできない課題になります。これを「攻めのデジタル化(デジタライゼーション)」と「守りのデジタル化(デジタイゼーション)」の両面において、真正面から見据えることが大切です。今、アフターコロナを考えるに際し、改めてアフターデジタルに留意することが重要と感じられます。

 

日本損害保険代理業協会アドバイザー

アイエスネットワーク シニアフェロー

栗山 泰史