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保険の虫眼鏡(第8回)

 

「保険ブローカー」と「乗合代理店」の位置関係

 

 1996年の保険業法改正は「金融ビッグバン」という銀行・証券・保険に関する三位一体の大改革の流れの中で行われたものであった。これによって、それまでの護送船団行政と称された監督の在り方は根本から見直され、保険会社の経営は「保険の自由化」という厳しい環境に導かれることになった。

「保険会社の経営」に関する大改革が実現する中で、大きく変わることなく先送りされたのが、「保険募集人」に関する改革であった。金融商品の場合、銀行法の改正と金融商品取引法の制定によって、従来とは大きく異なり、消費者への丁寧な説明が義務付けられたが、保険の場合は昔ながらの「義理・人情・プレゼント(G・N・P)」による募集スタイルが容認されることになった。丁寧な説明による消費者の保険への理解促進よりも、普及促進がまだまだ優先される状況であったからである。

 

しかし、「利用者利便性」や「国際性」の観点からは「保険募集」に関しても何らかの「新しさ」を打ち出す必要があり、「中立的な立場から利用者に最もふさわしい商品をアドバイスすることが期待される」として、保険募集制度改革の目玉に位置付けられたのが、「保険仲立人制度」の創設であった。ただし、前回も記したとおり、当時の支配的な雰囲気は、既に乗合代理店がブローカーに近い機能を有している中で、無理してブローカーを生み出す必要はないというものであった。そして「保険仲立人制度」には、事実上、高くて長い障壁が設けられ、多くのものが参入に躊躇し、または参入したものの脱落していくことになったである。

 

こうした流れに楔を打ち込むことになったのが、「我が国金融業の中長期的な在り方について(現状と展望)」という報告書である。これは、金融審議会の「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキンググループ」によって2012年5月28日に公表された。ここでは、個人金融サービスの在り方について次のように記している。「金融業が商品開発・販売態勢を強化していくためには、その前提として、顧客が自己のニーズを明確に認識し、十分な情報と豊富な選択肢を基に購入判断ができるような環境を整備する必要がある。こうした観点からは、健全性や信頼性を確保しながら、独立系の投資運用業者を育成していくことや、保険仲立人の機能が適切に発揮される環境の整備が必要である。」

 

「保険仲立人の機能」という言葉が見られるが、わが国の現状では、保険仲立人は極めて少数にとどまり、企業分野を主な活動領域としている。従って、個人分野において「保険仲立人の機能」を有するものとしては乗合代理店に焦点が当たることになる。そして、これに対応する形で実施されることになったのが、今般の保険業法改正によって設けられた「比較推奨販売を行う乗合代理店の体制整備義務」である。

そして、同時に「保険仲立人」そのものに関しても、ついに、参入促進の観点から制度の見直しが行われることになった。乗合代理店に関しては「規制強化」が行われ、保険仲立人に関しては「規制緩和」が行われることで、同じような機能を持つ両者への規制が近似化、調和化の方向に向かうことになったのである。

 

この結果、保険募集人は、大きく次の2つのカテゴリーに分けられることになる。第一に、保険会社の監督下で保険募集を行う「従来型の募集人」、すなわち、「生保の営業職員」、「専属代理店」、そして「比較推奨販売を行わない乗合代理店」である。第二に、独自の募集プロセスを持つがゆえに、保険業法改正以降、行政が直接目を光らせることになる募集人。すなわち、「比較推奨販売を行う乗合代理店」と「保険仲立人」である。最も重要な点は、比較推奨販売を行う乗合代理店は、代理店ではあってもむしろブローカーに近い位置に置かれることになることである。

次回、さらに保険仲立人制度について記すことにしたい。

 

日本損害保険代理業協会アドバイザー

栗山 泰史