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保険の虫眼鏡(第9回)

 

「保険ブローカー」と「乗合代理店」における戦略的岐路

 

 少し前になるが、今年の年頭所感をみると、日本保険仲立人協会の理事長である平賀暁氏は、主要な課題として「仲立人の存在価値や意義を高める」と記した上で、「業法改正を絡めて、“仲立人の立場”を情宣する。」ことを第一番に掲げている。

 保険仲立人、すなわち保険ブローカーが保険会社ではなく「顧客の代理人」であることは今更言うまでもない世界の保険業界の常識である。ところが、わが国においてこの点が明確化されたのは、今回の法改正によってである。今般初めて、保険業法の第299条に「顧客からの委託を受けて」という文言が追加された。ちなみに、この改正は、「新しい募集ルール」に関する法改正のように公布から2年待つことなく「公布から3月以内」に施行されることとなったから、即日実施に近い扱いである。

 保険ブローカーは、金融庁の直接の監督下に置かれるという点で代理店よりも厳しい規制を受けている。実務上も結約書の締結を義務付けられ、契約者が要求した場合には手数料も開示しなければならない。そして、ベストアドバイス義務(誠実義務)という、原点に返って考えてみれば「そんな義務、守れるのだろうか」というような義務まで課せられている。しかも、これまでは「顧客の代理人」という最も重要な立場さえ明確にされていなかった。保険ブローカーを目指すものが極端に少なかったのは当然のことである。

 しかし、法改正による新しい保険募集ルールによって、「保険仲立人の機能」を持つ募集人として、これからは保険ブローカーに「比較推奨販売を行う乗合代理店」が加わることになる。特に「規模の大きい特定保険募集人」の場合、保険ブローカーへの規制に比べれば、それでもまだ緩いが、相当程度、差は縮まったといえるだろう。

 こうした規制の変化によって、今後、大型の企業代理店の中に、代理店から保険ブローカーへの戦略的な転身を検討するものが出てくるかもしれない。その場合、顧客へのアピール力という点での保険ブローカーの優位性と、規制が緩いという点での代理店の優位性の比較衡量によってどちらの道を選ぶかが決まるのであろう。ここにこそ、戦略的岐路が存在するのである。

 

日本損害保険代理業協会アドバイザー

栗山 泰史